いきなりネタバレになりますが、映画『シックスセンス』を観たときにこれって『死と彼女とぼく』第3話と似た話だなーと思いました。ちなみにこの作品の発表は1989年、『シックスセンス』公開のちょうど10年前です。
今日はそんな『死と彼女とぼく』シリーズの、衝撃的な1巻の内容を【一部ネタバレあり】で紹介します。
あらすじを知りたい方はこちらのエントリーをどうぞ!
私を生かしているマンガ『死と彼女とぼく』 - なにか新しいこと日記
【目次】
『死と彼女とぼく』1巻の各話タイトル
- 1話 死者をみる少女/ 1988年週刊少女フレンド9月増刊
- 2話 さみしい耳/1989年少女フレンド3月増刊
- 3話 死が…みえる/1989年少女フレンド8月増刊
- 4話 死をみつめるとき/1990年少女フレンド1月増刊
- 5話 かなしい瞳/1990年少女フレンド4月増刊
- 6話 死と彼女とぼく/ 1990年少女フレンド8月増刊
1巻の頃は少女向けの『フレンド増刊』に不定期で載っていたんですよね。
初回は今見ても詩のようで、かなり実験的作品のように思います。だから、最初はなかなか評価されなかったんじゃないかな。2~3話辺りから徐々に人気が出るようになって『サスペンス&ホラー』が創刊された時に雑誌を移ったんじゃないかと勝手に想像しています。
折しもホラーブームの時代でした。
1巻の伏線回収、ここがスゴイ!
主人公二人の出会いにはいきさつがあって…
前々前世からじゃないけど、松実君のほうが以前から一方的にゆかりちゃんのことを知ってたんです。でもどこにいるかわからなくて何年も探し続けてやっと居場所を突き止めたので、同じ高校に転校してきたっていう…。
一歩まちがえば、思い込みの激しいストーカー野郎です。危ない野郎だぜ。
1話の冒頭では学ラン姿の何者かが遠くからゆかりちゃんの姿を見守る様子が描かれています。これが、松実君です。
『死と彼女とぼく』1巻/『死者をみる少女』より
この話では唐突に松実君が転校してきて二人が出会った場面しか描かれていません。過去の話は3~6話で徐々に明らかになっていきます。この伏線(以前から松実君がゆかりちゃんを探していたこと)を不定期の掲載で、2年もかけて伏線回収しているのがスゴい!と思いました。
きっと不定期でも、この話を描き続けるように励ました編集者もいたんでしょうね…。
ストーリーテラーとしての川口まどか
『死と彼女とぼく』は1989年に始まり、途中掲載誌を変えつつ2017年現在に至るまで28年も続いている息の長〜い作品です。
川口先生の頭の中には、豊富なドラマが次々に浮かんでくるんだと思う。
後のシリーズではわりに同じフォーマットの話が延々続くんだけど、初期のドラマの作り方とか、セリフまわし、ビジュアルの衝撃は本当に鮮やかで、スゴイと思います。
衝撃の第1話冒頭シーン
第1巻の、冒頭のシーンを紹介します。
たとえるなら君は音のシグナル
そしてぼくはただの歩行者
暗闇にとつぜん赤のシグナル音
君はいま死を目撃した
そしてそれとほとんど同時に青のシグナル音
悲しくてやさしい青のシグナル音
たけどシグナルに歩行者はみえていない
それは歩行者がいなくても点滅しつづける
孤独なシグナルと似ている……
『死と彼女とぼく』1巻/『死者をみる少女』より
(改行を入れました)
たった20ページしかない短編マンガの、この最初の6ページをぜひ全ホラーファンに見て欲しい。
詩のようなモノローグの凄さと、見開き2ページを使って描かれた絵の衝撃を味わってぜひ欲しい。初見で驚いて欲しいので画像はあえて引用しません。あしからず…。
終わりに
Kindleではこのシリーズは全5巻まとめ買いしても3,240円で読めます。単行本2冊分が1冊にまとまって648円なので、かなりお得だと思う。
ホラーマニアとしてはイチオシの作品です。この作品、後続のシリーズがいくつもあるので次回まとめてご紹介します。
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このブログとは別に、ホラー専門ブログ『奇怪文庫』もやっています。