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ジェシカ・ラング、あなたは誰より美しい

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ジョヴァンナです。こんにちは!

今日はヒャッハー委員会の2月のお題に参加して『グランド・ホテル』形式の作品をご紹介いたします。

[目次]

『グランド・ホテル』形式とは

 『グランド・ホテル』は1932年に公開されたアメリカの映画。ベルリンにある一流ホテル「グランド・ホテル」を舞台に偶然居合わせた人物の人間模様をリレー形式でつなぎ合わせ、巧みな編集技術で効果的に見せた作品です。

グランド・ホテル(1932) (字幕版)

グランド・ホテル(1932) (字幕版)

 

この手法が当時としては斬新でヒットしたために同様の手法を用いた作品が数多く作られ、今日では『グランド・ホテル』形式の元祖として知られるようになりました。

(グランドホテル方式 - Wikipediaより、まとめ)

 

それで何を紹介しようか……。悩んでいたところ、はたと思いつきました。私の大好きな作品にこの形式のものがあったじゃないか!

その名も『アメリカン・ホラー・ストーリー』。

ゾンビこそ出てきませんが猟奇殺人が頻発する悪趣味なドラマです。(苦手な方やホラー耐性のない方は、このあたりでそっと閉じていただくことをお薦めします。)

 

『アメリカン・ホラー・ストーリー』シリーズの特徴

この作品はシーズンごとに話が完結しており、年代や舞台、登場人物をガラリと変える趣向でシーズン6まで製作されています。

共通するのは主要な登場人物を演じる俳優だけ。それも毎回全く異なる設定・配役を演じます。(一部複数のシーズンにまたがり登場する人物もいます。)

 

シーズン4まで看板女優を務めたのがジェシカ・ラング。1949年生まれ、堂々たるベテラン俳優です。

Embed from Getty Images

あるときは娘を溺愛する情緒不安定な母親、あるときは精神病棟を支配する厳格なシスター。また、あるときは魔女の首領。そしてあるときはフリークたちを率いるサーカスの団長として、すばらしい演技を見せてくれました。

残念ながらシーズン4を最後に降板しました。どれも魅力ある作品ですが、今日はジェシカが出演した最後のシーズンを紹介したい。

 

シーズン4『怪奇劇場』のザックリしたあらすじ

FOXが提供する公式情報はこちらです。

アメリカン・ホラー・ストーリー:怪奇劇場|FOX|FOX ネットワークス

怪奇劇場=「フリーク・ショー」とは奇形の人や動物を集めた「見世物小屋」のことです。この作品では1950年代のフロリダを舞台に、フリーク・ショーを興行するサーカスで起こった怪奇事件を描いています。

前半は彼らが滞在する町で殺人ピエロが暗躍し、町民が次々に餌食となります。容疑者として捕らえられた無実のフリークは非業の死を遂げることに……。

後半では一座に潜り込んだ詐欺師がフリークたちを騙して命を奪い、標本にして博物館に売り飛ばします。誰が敵で誰が味方なのか。複雑な愛憎関係がもつれたまま、どんどん人数が少なくなるフリーク・ショー。

 

不謹慎過ぎるテーマに内心ビクビクしながら視聴しました。フリークをなぶり殺しにするような演出がなかったのは不幸中の幸い。『SAW』なんかと比べれば、まだしも残酷描写は控えめで見やすいドラマです。

 

主人公エルサ・マーズの人物像

さて、ジェシカ・ラング演じるエルサはサーカスの女主人。第1話のショーではデヴィッド・ボウイを模したエメラルド色のスーツ姿で登場し『Life on Mars』を披露します。歌声は美しいけれど、フリークには見えない彼女の奇抜なメイクと大げさな演技は老醜を浮かび上がらせ、観客を退屈させるだけ。空席だらけの客席にエルサは意気消沈します。 

 

シリーズを通してジェシカの役回りはいつも同じ。中心となる立場で物語を支配しますが、独善的な性格が災いし結末では孤立してしまいます。また年齢に似合わぬ派手な化粧や服装で、内心の不安を隠しているのもいつも同じ。

美しいけれど、孤独でさびしい人なのです。こういうふうに老いたくはないと思わせるみじめな姿を晒しています。シーズン1~4を通してシナリオは一貫している。ただ、執着の対象がその時によって変わるだけ。愛であったり、権力であったり、名誉であったり。価値あるものに執着してわがまま勝手に振る舞うものの、最期には全てを失って孤独に返る……。

ワンパターンの構図には、年老いた女性に対する「悪意」を感じます。

 

ハロウィーンにまつわる奇怪な迷信

このシリーズはアメリカでは毎年10月に放映を開始しています。10月31日、ハロウィーンは死者がよみがえるお祭りの日。日本でいう「お盆」みたいなものです。そのため、ハロウィーンを効果的に絡めた展開があるのもお約束。

『怪奇劇場』ではハロウィーンにまつわる迷信があって、この日は決してショーを行ってはいけない。この日に舞台に立ったフリークは、地獄の死者エドワード・モルドレイクに連れ去られるというのです。第3話・4話では果たして彼が姿を現し、エルサが膝をついて「どうか私を連れて行って欲しい」と哀願するシーンがあります。その願いは叶えられませんでしたが……。

並みいるフリークに囲まれ、一人だけ奇形ではないように見えるエルサ。彼女がひた隠しにしてきた秘密とは。人に知られたくない「人生最大の恥」とは何だったのか……? 第4話で明かされた過去が、ラストでは衆目に晒されんとする危機が訪れます。

そのとき、彼女がどう選択したか……!

ここでやっと、ジェシカが繰り返していた輪廻から解き放たれる時が来ます。全ての罪が許され、魂が解放されるとき……。

ぜひ、ジェシカの最後の演技を見て欲しい。このシリーズを見続けて良かったと感動するラストシーンでした。すばらしい物語だった!

 

ジェシカ・ラング の歌声

4作観た中で最も印象に残るシーンと言えば、私はシーズン2の『精神病棟』の幻覚の中でジェシカがノリノリでミュージカル調の歌とダンスを披露するシーンを推します。『The Name Game』という曲をパロって登場人物の名前を次々にコールする演出が楽しい。陰惨なエピソードばかりのシーズン2の中で、唯一かもしれない笑えるシーンでした。

だからこそ『怪奇劇場』の中で再びジェシカが歌うのを観たときは感激でした。デヴィド・ボウイの『Life on Mars』『Heroes』の他に、ラナ・デル・レイ の『God&Monsters』を歌っています。50〜60年代のストーリーなのに、そこから随分先のアーティストの曲をオマージュして歌っています。どれも、実に良かった!

またエルサはドイツから戦火を逃れ渡ってきた歌手という設定で、言葉に独特の抑揚があるのも素敵でした。(ドイツ訛りなのかな、あれは?)

年齢を重ねて顔にシワが刻まれてもなお、美しい。ベテランの堂々とした演技と、女の生き様を堪能できる作品です。

 

今回はジェシカ・ラングだけをクローズアップして取り上げましたが、この作品は『グランド・ホテル』形式。他にもメインキャストとしてサラ・ポールソン、ピーター・エヴァンズ、リリー・レイブら多彩なキャラクターが織りなす人間模様を同時進行で楽しめます。ジェシカが降板した後のシーズン5ではレディ・ガガが出演しており、これも観るのが楽しみ!

悪趣味で耽美でエロスなホラー作品として観る人を選びますが、ハマる人にはハマる。初見の方はシーズン2から観ることをお薦めします。

 

2018年2月現在、Netflixでシーズン1〜6まで見放題です。(有料配信)

Amazonでも有料レンタル視聴可能。