山岸凉子先生の『レベレーション(啓示)』2巻が2016年12月22日発売と知って楽しみに待っています。
先日弥生美術館での原画展に行ってから山岸先生の絵の魅力に目覚め、いろいろと読み返していました。やっぱり、文庫じゃなく大きい判型のほうが細部まで堪能できて良いです。
『レベレーション(啓示)』は、一読して背景が少なく人物を中心に描いた単純な絵柄のように思いましたが、再び読むとこの時代の衣装とか景色だとか人物の描き分けが細かくて、さすが山岸先生、緻密だわ…と思いました。
【目次】
天使降臨図の衝撃
何よりも、ジャンヌダルクが神の啓示を受けるシーン。この天使降臨の図が衝撃的でした。
- はじめは、光と天の声のみを聴くシーン。
- その後、翼を持った「顔」を見るシーン。
- 次いで、天使が降りて来て…「フランスへ行け、王を助けよ」と言われる。
- さらに鎧を着た大天使ミカエルが降臨し「乙女ジャンヌ」と呼びかけられるシーン。
1巻の中だけで4度も「啓示」を受けるシーンがあって、これがそれぞれ凄い図だな…と思いました。
(勝手に画像紹介するのも憚られるので、以下にごく一部のみ引用させていただきます。)
天使降臨の図は絵のモチーフとしてはよくある図だから、マンガ家も描くならば自分なりの表現を見つけて工夫して描くのは当然だと思います。
だけど4回もの天使降臨図を全部異なる形で、畳み掛けるように描き分けて見せるのが山岸先生の凄さじゃないかなぁ。
宗教画としてハッキリ描いているところと、実際にジャンヌが見た像としてぼんやりとしか表現していないところの描き分けも凄い。
宗教画として紹介されるシーン
『レベレーション(啓示)』1巻より
ジャンヌが見た「啓示」はこちら。
『レベレーション(啓示)』1巻より
たぶん…天使は、神の遣いとして人格が曖昧にほとんど顔を見せないように、あえて描いているんだと思う。
1枚だけ天使様の顔がアップになったシーンも凄いです。
『レベレーション(啓示)』1巻より
これはまさに宗教画。
ちなみに前後のページがまた凄い!
毎回がこのクオリティだから、隔月という連載スピードも(待ち遠しいけど)仕方ないと思ってしまいます。
紫色の瞳の女性が意味するもの
何気なく描かれているように見える表紙の絵のジャンヌの目の色…。
この紫色にも意味があると思います。
例えば『ハトシェプスト』という作品において山岸先生は、古代エジプト王朝唯一女性のファラオを「紫色の瞳」として描いています。
こちら、白黒のイラストしか見当たらないのが残念。
『ハトシェプスト』文春文庫より
山岸作品で紫の目の女性が登場したら、それは「異能」を意味していると思う。
他にぱっと思いつくところでは『青青の時代』の卑弥呼。例えばこの絵だとうす紫色の瞳をしてますね。
あとは『時じくの香の木の実』の巫女の姉妹。白黒のマンガだから目が何色かはわかりませんが、少なくとも表紙の絵の女性の目は紫色だったようです。
(山岸作品ではしばしば内容を象徴するが、本編には登場しない抽象的なキャラクターが表紙を飾る。)紫色の目は白人でも非常に稀だそうです。(有名なところでは、エリザベス・テイラーが見事なヴァイオレットの目をしていたとか。)
カラー原稿はやっぱりカラーで見たい
うーん、しかし、毎回力作のカラー表紙絵が単行本や文庫の中に入ると全部白黒になっちゃうのが残念。今後、カラーの原稿はカラーとして再現した愛蔵版をぜひ出してもらいたいと切に願います。
追記 2016/11/17: 『アラベスク』『日出処天子』はKADOKAWAメディアファクトリー「完全版」てやつが出てまして…。他も出してもらいたい。『妖精王』とか。Kindleでも!