なにか新しいこと日記

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肺がん患者・家族の記録《その1》発覚

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第一報

8月末。実家の母からメッセージが届いた。
「話しておかなくてはならないことができました」
この感じ、100パーセントろくでもない話だな!?
もしかして……病気か?

「7月の初めに健康診断に行ったら、レントゲンで肺に白い影が写って……A病院にはPETの機械がないからB病院まで行ってPETを撮ってもらったら、2cmぐらいのかたまりができてるって。それでA病院の呼吸器外科のH先生が言うには、調べてみないと確かなことはわからないけど、十中八九、がんだろうって」
ああ、やっぱり……。

現段階では確定ではないが、たぶんがんだろう。
内視鏡で腫瘍を取り、検査の結果次第で治療方法が変わるそうだ。左の肺を部分的に切除することになる。
「今の時点で先々のことを想像して悩んでもしょうがないよ。今は体力を充実させて、手術に備えるのみだね!」と励ました。
「2人に1人はがんになる時代だから。お父さんとお母さん、どっちかはなるだろうって予想してた。お母さんの方だったとはね……」
「こんなろくでもない話で心配かけてごめんね」
「電話してもいい?って言われたときに、病気の話かなって想像してたから。私はそんなにショックを受けてないよ」
母の方は随分ショックも受けただろうし、あれこれ悪い想像もしているだろう。私の口から悪い話はしないように努めた。

スケジュールと役割分担

医師による説明の日、入院日、手術日など、今後のスケジュールを確認した。
現在A病院では入院中の面会は禁じられており、医師が求める場合のみ立ち会いが許されるようだ。

6年前。母は都内のC病院に入院し、良性腫瘍の治療を受けた。そのときもややこしい治療だったから、父と3人で説明を聞きに行ったし、入院の日も私が付き添い、毎日お見舞いに行った。
父は説明の日には来たが、母曰く、昼食をどこで食べるかばっかり気にしていたらしい。しょーもなッ。そう言えばそんなことあったね!? そういうのってやられた方は忘れないよねー。(わかる。)
その後も父は「俺が行く必要ないだろ」と冷たい態度だった。C病院なんて行ったのは1度きりじゃないか?
今回も予定していた釣り旅行の日程とかち合ってしまい「入院の日はタクシーで行けるだろう」とうそぶいていたらしい。
母は怒っていた。
「肝心なときに役に立たない人なんてリコンだよ、リコン!」と私が言ったら笑っていた。
(直前になって、父に確認したところ、旅行を早めに切り上げ入院日は車で送っていくと言っていた。まともな返答で、ほっとした。)

 

われわれ家族は12年前、弟が死にかけたときに地獄を見ている。
あれ以上ひどいことは、人生にそうそうないだろう。
最悪これが母にとって命とりになるとして、ずっと先のことだろうし、そう願いたい。
それよりも家族の口から病人に対して最悪のことを想像させるような発言は慎まなくては。ぽろっと言ったことで不安にさせ、ダメージを与える可能性が高いように思う。

 

「◯◯叔母さんにはもう、話したの?」
「まだなにも言ってない」
「それじゃあ、全部終わってからの方がいいね。あの人は急に電話してくることがあるから、電話を早く切りあげる口実を考えておいた方がいい。『Kのことでこれから面談がある』とか言って切るんだよ。必ず電話してくると思う。言い訳を準備しておいて」
最初に心配したのはこのことだ。人間関係のプレッシャー以上に害になるものはない。

 

「説明の日は私も行くわ」

良性腫瘍の予後について医師が告げた見通しを、2年経ったら母は忘れていた。当時は精神的に動揺していたのだろうし、難聴のため一部聞き取れていなかった可能性もある。
こういう機会は、許されるのであれば家族も同席して話を聞いておいた方が安全だ。
手帳にスケジュールを書き込み、心づもりをした。

 

母は60代。そこそこ体力もあるし、じいさまは墓の中。ばあさまは施設。弟のKもグループホームに入っていて、他にお世話が必要な家族もない。
幸い入院前に2回の予防接種を終え十分な期間が過ぎている予定だ。新型コロナの心配はしなくていいだろう。
このご時世で9月中にも入院できて手術してもらえるなら、幸いだ。

指針

私がこういうふうにさっと切り替えできたのは、去年の11月、ハルノ宵子の『猫だましい』を読んで、何度か読み返したからだと思う。

ハルノさんは吉本隆明の娘で、吉本ばななの姉だ。
病弱なお母さん、足が不自由になったお父さんを長年看病して見送り、その間、ハルノさん自身2度のがんを経験された。とにかく家族の病気や自分の病気、猫の病気の経験が豊富で、医者との付き合い方、病気との付き合い方を心得ている。
その上、皮肉なユーモアの持ち主だ。読みながら何度もアハハと声を上げて笑った。

この本を読んだとき「われわれは2分の1の確率でがんになる。私の親もきっとがんになる」とふっと腹に落ちた。
ジタバタしたって無駄だ。悪くなったところは切って様子を見るしかない。
われわれにできることは《ニセ医療》にだまされないように主治医の話をよく聞いて、わからないことは質問し、理解し、未来に備えること。それがベストだ。

こんなに早くその日が来るとは予想外だったが、去年のうちにこの本を読んでおいて良かったなーと思う。

参考書・参考サイト

Kindle Unlimitedで取り急ぎ、参考書を読んだ。

2016年の出版でちょっと古いが情報がコンパクトにまとまっており、すぐに読めるものだ。現時点ではあまり細かい情報は必要なく、統計や病気の概要がわかれば十分と考えた。
医師の話を聞く前に最低限の知識を備えておきたかった。

本には信頼できるサイトと、患者や家族をサポートするための10の書籍の紹介があった。例えば『退院後のがん患者と家族の支援ガイド』など。

このリストは後で役に立ちそうだ。

【本に紹介されていた信頼できるサイト】

ganjoho.jp

cancerinfo.tri-kobe.org

www.cancernet.jp


書名とサイト名を手帳にメモした。

それからA病院のホームページを見て、呼吸器外科のページに書いてある内容(実績・主たる治療方法)と医師の名前を一通りチェックした。

おことわり:このシリーズでは、おもに《がん患者の家族》として考えたことや取り組んだことについて後追いで記録し、シェアする予定です。リアルタイムの病状について詳しく述べたり、正確な医療情報を提供する目的ではないことをご理解ください。