こんにちは、ジョヴァンナです。
しばらく忙しくてマンガから遠ざかってました。
『逃げ恥』が完結したから読まねばと思っているうちに早半年。やっと最終話(9巻)が読めたので私なりにレビューしてみます。
結末の《ネタバレ》あります。ご注意ください。
『逃げ恥』のザックリしたあらすじ
主人公は、家事代行として個人宅で働き始めたみくりさん。次第に雇用主の平匡さんと仲良しになり、お互いに了解の上で偽装夫婦として「契約結婚」し、家事の仕事を続ける。二人の間にセクシャルな関係はなかったが同居するようになってお互いを意識し始め、愛情が芽生え、ついには籍を入れて普通の夫婦になりました、というお話です。
ちょっと順番が違うだけでなんだ普通のラブストーリーじゃんか!と、最終的にはそこに落ち着きました。
メインテーマは「家事労働は誰が負担すべきか?」
みくりさんのおもしろいところは「家事労働の賃金」に徹底的にこだわっているところ。
二人が愛情で結ばれた後も「せっかく家事労働で賃金を得ていたのに、入籍してもこれまで通り対価は支払われるのか?」と真剣に悩みます。(6巻p120)
読者としてはここはぜひ、平匡さんには入籍しても家事の対価を払い続けて欲しかったところですが……。
(9巻p75〜)
最終巻では平匡さんの転職、みくりさんの就職で共働き化してしまい、一般家庭並みに分担がゆるくなって、テーマをはぐらかされた感じがあります。
しかしよく読むと、
「お互いに役割分担すると義務になって感謝がなくなってしまうから、それぞれ自分のことは自分でしよう!」「ついでにできることは相手の分もやるけど、そのことについては感謝を忘れずに」
と、当たり前のようでいてなかなか難しそうなアイデアが示されていました。この通りにできたら、すばらしいよね!
この作品、やっぱり私は女性としてパートナーに読んで理解して欲しいマンガ・ナンバーワンだと思います。
ところでだ。そんなみくり・平匡カップルをよそに、このマンガではもう一つの重要なストーリーが同時進行していたのである!!
最終巻、百合ちゃんと風見さんに全て持っていかれた!
みくりさんの叔母に「百合ちゃん」という人がいまして、素敵な女性なんですが、これまでの人生に「これぞ」と思う人がいなかったんですね。他人とセクシャルな関係を結ぶことのないまま、50代を迎えたバリキャリウーマンです。
もう閉経もしているし子を生むこともなく、処女のまま生涯を終えるんだ……と本人は思っていたところに現れたのが平匡さんの同僚男性、29歳の風見さん。
この人が年齢のわりに飄々としてクールで、でも思いやりがあって、百合ちゃんとは気が合ったみたいなんです。
で、ついには百合ちゃんに気持ちを伝えます。
(8巻p48)
この辺り、女性読者を殺しにかかっている名シーンです。(私はドキッとした。男性読者がどーかは知らないっ)
百合ちゃんはどうしても、年齢差が引っかかってしまい受け入れられない。”もうちょっと年が近かったらなあ”と笑って、きっぱり”ごめんなさい。でも本当に嬉しい。ありがとう”って断るんです。(8巻p117)
この二人のやりとりが、後半はいちいち良かったなぁ……。
気高く心優しい百合ちゃんの言葉に、私は何度も泣かされました。
セリフだけ抜き出しても良さを伝えられないので、ぜひマンガで読んで欲しい。
(ドラマにも百合ちゃんの名シーンはあったみたいですね。)
最終的に風見さんがもう一度告白し、百合ちゃんも"あなたがいないと、やっぱり寂しい"と認めてハッピーエンドを迎えるわけですが、ほんと、この二人に最後は全て持っていかれました。(9巻p94)
正統派のラブストーリーだった。
海野先生に乾杯!
番外編:高齢処女の現実
このように、人を愛するのに年齢制限はありません。結婚も、男女の間ならいつでもできる。
でもセックスはどうでしょうか?
肉体的に衰えがあると難しい部分もあるんじゃないか。
百合ちゃんが風見さんと交際することになった後に、かかりつけの婦人科で相談するシーンがあります。
”50代で初めての性行為をする場合、問題点というのはあるのでしょうか?”(9巻p138)
下世話と思うかもしれないけど、30代40代〜で初体験の人だっていると思うんだよね。そういうときにどうしたらいいのか? 1つの知見が書いてあります。もし似たようなケースでお悩みの方は、読んでみると参考になるかもしれません。(女性ならば婦人科で聞くのが一番良いとは思うけどね。)
ちなみに平匡さんは風見さんと同年輩(アラサー)で童貞だったそうですが、いざというときはそんなに問題なかったようである。
いずれにしても、昔みたいに無理矢理にでも結婚しなきゃいけない時代でもあるまいし、未経験のまま30代40代を迎えている人って、男女共わりにいると思うんだよね。
そういう人に向けて「いざそういう段になったら、やっぱり慌てちゃうよね。でも落ち着いてコミュニケーションしながら臨めば、大丈夫!」って応援する作品でもあるんじゃないかな。
社会の渦の中でもがく人たちに向けた、作者の温かい目線を感じます。
何歳でも、人を好きになっていいんだよ。
何歳でも、恋は始められるよ。
って、エールのような。
まさに大人が読むべきラブストーリーであり、現在における「結婚」「家事の役割分担」を考えるヒントになる名作として、おすすめしたいマンガです。
なお、" "内は主に作中からセリフを引用し、適宜句読点を加えたものです。一部省略したところもありますが、大きく改変はしていないつもり。