『ベイクオフ・ジャパン』を見て鎧塚さんのファンになった

パートナーと共に観ていた『ソーイング・ビー』の放送から次回の放送までの空白の期間。『ブリティッシュ・ベイクオフ』という番組が放送されていた。

「コンテスト形式でパンや焼き菓子を焼く番組だよね。おもしろいらしいよ」
「プライムビデオに『ベイクオフ・ジャパン』っていうのが入ってるな。Amazonオリジナルだって」
「ふーん、日本版作ったんだ……」
「鎧塚さんが出てるぞ!」
「へー、鎧塚さんが」

 

何気なく観始めたらおもしろくて、一瞬にして引き込まれた。
とにかく鎧塚さんのキャラクターがいい! 説明が明晰で素人にもわかりやすいのだ。

※この先、一部ネタバレあり。

【目次】

失敗するのはお見通し

まず初めに参加者がどんなものを作ろうとしているのかプランを説明するとき、鎧塚さんは即座に問題点を見抜き、やさしい言葉で注意を促していた。
この辺りは『ソーイング・ビー』でもおなじみの展開だ。

 

例えば、エピソード6。透明なゼリーの中に立体的な飾りを入れて見せる3Dゼリーの課題。
Satoruさんが2種類のゼリーを重ねて生地に乗せると説明すると、鎧塚さんは「生地の上にタピオカを散りばめて上にゼリーを乗せたら余計滑らない?」と指摘。
「そこはゼラチンを濃いめに作って、生地に塗って貼り付けようと思っています」Satoruさんは慌てて説明したが……それを聞いても鎧塚さんは怪訝な顔をしていたし、見ている私も「そんなことでくっ付くのかなあ?」と疑問に思った。

結局は鎧塚さんが懸念した通り。2種類のゼリーを重ねたらツルツル滑ってしまった。
完成したケーキを審査員の前に運ぶときに滑って床に落ちてしまうんじゃないかとこっちがハラハラするぐらい。


大体、いつもこのパターンだ。鎧塚さんが予想した通りにダダ滑りすることが多い。
パターンから抜け出し、知恵を凝らして試練を乗り切った人だけが最後まで勝ち進んでいった。

審査員2人のコンビがいい

日仏でベーカリーを経営するオーナーかつ、パン職人の石川芳美さんは長年のパリ暮らしで洋菓子にも詳しい。
試食して美味しければ、目を輝かせて「トレ・ボン(とてもよい)」「エクセロン(すばらしい)」というように素直に表現する方だ。

一方、鎧塚さんはガブっと大きく口に入れ、ときには顔をしかめたフリをして参加者を惑わせてから「……美味しい!」と言うような茶目っ気もある。

審査員2人の顔を見て味を想像しながら楽しんだ。

至難のスポンジケーキ

栄えある最終エピソード。鎧塚さんが言うには……「ジェノワーズ(=スポンジケーキ)に関して、日本人は世界一厳しいんですよ。海外ではそうでもないけれど、日本人は特に、フワッと、しっとりが大好きです」

確かに、私もスポンジケーキで「美味しい」と感じた経験がほとんどない。ケーキを選ぶときにはスポンジ主体のものはできるだけ避け、クリームが主役のケーキを選ぶことにしている。そのぐらい「スポンジ=カスカスで美味しくない」イメージだ。

 

3つめの最後の課題、ウェディングケーキの審査。石川さんの点は、やっぱり辛かった。
他がよく出来ていたとしても、中のスポンジがパサついてしまったり、硬かったり……。
しかし、ファイナリストのうち、1人だけ石川さんにスポンジで「エクセロン!」と言わせた人がいた。
その人の作品は(私の目から見れば)見た目も味のセンスもいまいちで、ずっと振るわなかったのにファイナルまで残り、最後の最後でやっと底力を見せてくれたという感じ。感動的だった。

Yuriさん、Aikaさんのライバル関係

私が応援していたYuriさんは毎回着実にこなして大きな失敗も少なく、堅実な成績。
センスよく洗練された美しい作品を作る。味も大体褒められていてなにを作らせてもお上手だった。

失敗をしてボロボロのケーキを差し出すときには「こんなものをお出しするのも申し訳ないですが……」と小さくなっていたのが印象に残った。

謙虚に見せかけて、実は策士……だったらおもしろかったのだが、Yuriさんは最後まで腰が低く、謙虚な態度を崩さなかった。

 

ライバルのAikaさんは奇抜な発想で失敗もあったが、途中から審査員のアドバイスを聞き入れ、グングン成長して他の人を引き離した。
発想力とメンタルの強さ。小さな失敗でめげずにつねに立て直し「より良い作品を作りたい!」という強いパッションを感じさせてくれた。


特に印象的だったのが、エピソード4のチョコレートウィーク。
2つめの課題でオペラが出題されたときにAikaさんは表面のグラサージュ(糖衣)だけがうまくできず、石川さんから「残念。ここが良ければ……」と言われ、2位に終わった。そうしたらすぐに次の課題で挽回しようと、この日までに練習してグラサージュ・ショコラのテクニックを完全に自分のものとして会得していた。

ボウルに入れたチョコレート液をケーキの上に流すと、とろーりと流れ落ちて表面にツヤツヤのコーティングができる。本人のシルエットが映り込んで赤みがかるくらい、鏡のように光るグラサージュが完成した。お見事!

後半はAikaさんが勝つか。それともYuriさんか。
白熱して、おもしろかった!

技術力のたまもの

全編を通じ、鎧塚さんの解説があったからこそ、香りや味わい、食感の良さ、見た目の評価など、素人にも評価のポイントが理解できた。

今まで漠然と食べていたショートケーキ、モンブラン、オペラなど。定番のケーキも作り方次第でこれだけ繊細な味わいを生み、美しく、美味しくできるのだとわかった。プロの技術の一端を見ることができ、感動した。

技術を発揮することと、それを人にわかるように説明できるのは全然別の能力だ。
並みの審査員では、番組をここまでおもしろいものにはできなかっただろう。そのぐらい、鎧塚さん・石川さんありきの番組だった。

 

そんな鎧塚さん、石川さんの技術を結集したお菓子やパンを食べてみたくなった。
トシヨロイヅカは京橋エドグラン、六本木ミッドタウン、京王線八幡山、小田原にある。

石川さんのメゾン・ランドゥメンヌは麻布台、赤坂、アトレ恵比寿内にあるそうだ。

せっかく東京に住んでいるのだから、両方とも、ぜひ味わってみたい。

トシヨロイヅカに行ってみた

用事のついでに八幡山のトシヨロイヅカを訪れた。

折しもハロウィン当日。大きなジャコランタンが出迎えてくれた。
立派なカボチャの彫刻が3つも! これも、おもてなしだ。

目当てにしていたオペラやモンブランはなかったが、栗のショートケーキ、フォレノワール、シュークリームなどがケースに並んでいた。すでに商品の半分は売り切れていたようだ。

母の好物のフォレ・ノワール(別名:シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ。その昔、流行ったと聞くが、最近ではあまり見かけない。パリでは定番と言われるドイツ風のチョコレートケーキ)を初めて味わって感動した。
チョコレートのクリームが美味しい!

トシヨロイヅカのフォレノワール(黒い森のケーキ)

シュークリームは、クッキーシューに注文を受けてからクリームを充填する方式だ。
カスタードではなく、中はバニラクリーム。淡いクリーム色をしていて上品な味わいだ。
これも、すごく美味しかった。

トシヨロイヅカのシュークリーム

パートナーに食べさせたら感動して「もう、駅前のパン屋のシュークリームは食べられないな」と言うので「食べれる、食べられるよ!」と言った。(もちろん、パン屋のシュークリームとは比べ物にならない。全くの別物として考えるべきだ)

 

1ケ1,000円位するかと覚悟して行ったら、そんなことはなかった。
ケーキが500円台〜
シュークリームが300円〜
良心的な価格だ。これなら毎週でも買いに行きたいぐらい。

 

『ベイクオフ・ジャパン』を観たら、すっかり鎧塚さんのファンになった。
京都出身と言われる鎧塚さんは穏やかで紳士的。人の気持ちを傷つけないように言葉を選んで優しくお話しされる。理路整然とした話しぶりの裏には人並外れた知性がうかがえる。
番組を見る限り、人格者だと思ったし、こういう人に指導されたら弟子も鍛えられて良いパティシエに育つだろうと感じた。

すっごくお菓子が食べたくなる、いい番組だった。

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