なにか新しいこと日記

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ガスミュージアムで、ガス灯時代の東京に思いをはせる【大人の社会科見学】

2024年4月、東京都小平市にあるガスミュージアムを訪れ、企画展『ガス燈ともる東京風景』を見てきた。(6月16日まで開催中)

東京ガス:GAS MUSEUM ガスミュージアム / ガスミュージアムについて

[目次]

アクセス

西武新宿駅から小平駅まで(西武新宿線)急行で30分。小平の駅から徒歩で30分。
私は歩きたいので最寄の小平駅を利用したが、歩きたくない人は近隣の西武池袋線・西武新宿線・JR中央線の駅からバスに乗車するほうが便利だ。

 

小平の駅から来る途中、特徴的な高い塔が見えた。これは「放散塔」といって防災のための設備で、地震があったときにガスを安全に空気中に放散する役割があるものらしい。

小平放散塔

小平放散塔

放散塔が建っている土地は、FC東京のグラウンドと東京ガスの多目的グラウンドに隣接しており、FC東京と東京ガスの密接な関係性がうかがえる。

ガスミュージアム

遠目にも目立つ赤レンガの建物は、明治時代に作られたものを移設復元したもの。

ガスミュージアム

庭園内には実際に使用されていた古いガス灯や複製を並べてあり、当時の雰囲気をしのばせる。(今でこそ中身は電球になっているが、湯島天神のものは1974年に銀座通りに建てられたものと同型だそうだ)

ロンドンのガス燈(19世紀)

ロンドンのガス燈(19世紀)

湯島天神のガス燈(明治中期)

湯島天神のガス燈(明治中期)

ウェストミンスターのガス燈(19世紀)

ウェストミンスターのガス燈の複製(19世紀)

このように古いもの、本物を保存して、惜しみなく市民に公開しようという姿勢がすばらしいと思った。

ガス灯館

1909年建築の東京ガス本郷出張所を移設復元した建物。

日本でのガス事業のはじまりは「灯り」であった。1階では実際のガス灯や照明器具とともに、創成期のガス事業について展示紹介している。

ガス灯館

ガス灯館

たまたま訪れた15時が、ちょうどガス灯の点灯実演の時間帯にあたり、私1人しか見学者がいない中、係の人が贅沢にも実際のガス灯をともして解説してくれた。

「ガス灯」以前は油を燃やして灯とりしていたので臭いし、すすは出るし、不便であった。
そこにガスが登場して一気に明るくなった。管から出るガスに点火して燃やし続ける裸火の状態。初期はガスの供給が限られるので、大きな商店や一部の施設でのみ使われた。コストもさぞや高かったろうが、夜に煌々と明るいのはめずらしいので、人寄せになったらしい。電気が普及する前、しばらくの間、ガス灯の時代があったのだ。

裸火のガス灯

裸火のガス灯

花形のガス灯

花形のガス灯

マントル式のガス灯

マントル式のガス灯

室内の電気を消し、暗い中で昔の灯を一つずつ点されると、実際の明るさを目で見て体感できる。ろうそくや裸火は明るい範囲が狭い。時代を追うごとに明るさが増し、広い範囲を照らせるようになった。

ドラマや映画からイメージしていた景色とはギャップがあり「夜はこんなに暗かったのか」とわかって驚いた。

夜になるとガス灯に点火してまわる「点消方(てんしょうがた)」という専門の職人がいて、ガス火のメンテナンスをしていたそうだ。

「点消方」の衣装と用具

「点消方」の衣装と用具

文明開花の横浜、銀座には、こんなはっぴ着た職人が飛びまわっていたわけだ。

常設展示のところに小林清親による「内国勧業博覧会」の複製画が展示されていて、菊をかたどった花形のイルミネーション「花ガス」を囲む人々の驚きと感動を伝えている。(絵はがきが売られていたので購入した)

小林清親「イルミネーション」

小林清親「イルミネーション」

企画展『ガス燈ともる東京風景』

ガス灯館2階で開催中の企画展は、井上安治という絵師が描いたガス灯の風景を集めたもの。

東京ガスがこうした錦絵を専門的に集めて展示しているなんて、知らなかった。(ほかにもいろいろ所蔵しているのかもしれないし、この絵師を渋沢栄一が後援していたとか、なにか特別な関係があったのかもしれない)

井上安治という人は26歳で夭逝して、ほんの10年ほどしか活動期間がないので全然知らなかったが、文明開花の東京を描いたすばらしい絵を多く残している。

井上安治「駿河町夜景」

井上安治「駿河町夜景」

井上安治「銀座商店夜景」1882年

井上安治「銀座商店夜景」1882年

構図の取り方もいいし、夜の闇の中でガスの光が映えるように、色彩のコントラストを考えて画題を配置しているのがよくわかる。優れた画家だ。

ガスミュージアムの学芸員も相当優秀な人が務めているのだろう。どこにも名前が見当たらなかったが、解説文もいいし、この図は地図上のどの地点をどの角度から見て描いたものなのか、古地図の中で図示して、絵の横に掲示している。考証と細やかな工夫が感じられる見事な展示だった。

ぜひこの展示は多くの人に見てほしいし、私もここはまた訪れたい。他の展示も見てみたい思う展示コーナーであった。

くらし館

くらし館

くらし館

こちらは、1912年建設の東京ガス千住工場計量器質を移設復元した建物だ。

1872年横浜にガス灯が初めて登場してから、まもなく1887年に東京で電灯事業が開始する。その後もしばらくの間、ガス灯のほうが優位であったが、1896年、渋沢栄一は欧米に技師を派遣して「今後のガス需要は熱源利用が主流となる」との認識をもつ。

欧米の現状を見て、自国の今後を占うというのは今でもわりと使える手法だが、当時から渋沢がそういうことをやっていたのはすごいと思う。東京ガスの展示でも渋沢はいたるところで盛大にフィーチャーされ、称えられていた。たぶん、子孫が株主になっているとか、今でもなんらかの関わりがあるのではないか。

1階では暮らしに関わるガス機器を数多く展示し、2階には原料の調達、輸送、都市への供給システムの展示があった。

2階のほうが私は興味があって、おもしろかったな!

LNG船の模型

地中にある天然ガスを日本に運ぶときに効率のため冷やして液状化させ、タンカー船で運ぶ。いれものは球形のほうが圧力に強く、単純な構造で品質管理しやすいそうだ。

東京の郊外でたまに見かける球形のいれものは、ガスが入ってるんだな。原料の液化天然ガス(LNG)は地中に埋めた大きなタンクで液状のまま保管し、そこから気化させたものをガスホルダーにいくらか貯めておいて、少しずつ管で各家庭に送っているようだ。

終わりに

ガスミュージアムは簡単な受付をするだけで無料で展示を見せてくれる。

東京ガス:GAS MUSEUM ガスミュージアム / ガスミュージアムについて

小学校の社会科見学で行くのもいいだろうし、おとなが見ても楽しく勉強になる歴史資料館だ。ここはまた来たい。

小平市が配布しているウォーキングマップのコースにも入っており、受付にあったので1部もらってきた。今回は行けなかったが、近隣にも興味あるスポットが多いので次回はこのマップを持って歩いてみたい。

小平市ウォーキングマップ

玉川上水沿いのウォーキングコースも90分ぐらいで設定されているので、歩数をかせぐのに良さそう。楽しそうだ。