おはよう。
最近あまり話できてなかったね。ここに手紙を置いておくから、君に届くといいな。
去年の今頃だったかな、私がこの映画を観たのは。映画を観る前はなんの前情報も知りたくないからできるだけ早く行かなくちゃって思いつつ、忙しくて10月になってしまった記憶がある。
映画の中の景色が綺麗で感動したよ。田舎の風景も見事だったけど、都会の描写もね。私がよく通る新宿の南口を、あんなにも美しく描いてくれてありがとうって泣きたい気持ちになった。
体力の限界まで働いて消耗し切った心に、甘露がしみわたるようでした。
恋愛の描写は少し不思議だったな。
一度も顔を合わせることなく恋に落ちるなんてあり得ると思う?
でも恋とは不思議なものだから、お互いにしかわからないこともあるんだろうって軽く流しました。
私が一番感動したのはね、取り返しがつかないことが起こってしまった後で、どう行動するかっていうこと。行動を起こすための情熱。 その後で起こった奇跡。
新海監督は、311の震災と事故と津波に打ちのめされたこの国で、どうやったら人の心に訴えるものが作れるかって考えたんだと思う。
現実に起こってしまったことはもう取り返しがつかない。圧倒的な暴力によって、愛する人をさらわれてしまったら……想像でしかないけど、全てが虚しく感じるんじゃないかな。現実に打ちのめされたとき、フィクションは無力だよ。
でも、フィクションだからこそ奇跡を起こすことができた。
ああ、お話の中だけでも取り返しがついて良かった……!って、私は暗闇で泣いたよ。
人生で起こる出来事には取り返しがつくこととつかないこととがあって、私は既に「取り返しがつかないこと」を経験してしまった。
取り返しがつかないことが起こった後の日々を、我々は生きていかなきゃならない。だからこそ、精一杯の奇跡を見せてくれてありがとうって思った。
悲しみが雨で洗い流されるように、見終わった後は心がサッパリしました。
音楽も良かったね。ミュージシャンは監督からNGを出されてはやり直し、監督は「曲に合わせて台詞も削ったり尺を伸ばした」というぐらい、こだわり抜いてつくっているからこそ、バッチリの音楽だった。
私は『なんでもないや』が好きです。
ナイーブな優しい歌声で始まってサビのところで畳み掛けるように言葉を重ねていくのが、気持ちの高まりを表現しているように思える。
いいなぁってところはたくさんあるんだけど、
嬉しくて泣くのは悲しくて笑うのは
君の心が君を追い越したんだよ
『なんでもないや』作詞/作曲・野田洋次郎 より
ってところが一番好き。
気持ちが体を追い越すのって思春期ならではって感じがする。感情の高まりとか思いだけが先走って、理性が戸惑ってしまう感じを懐かしく思い出しました。
さて。ここまで読んでくれてありがとう!
気温差もあるし、秋は体調を崩しやすいんじゃないかな。少なくとも私は苦手です。つい物思いに耽ってしまう季節でもあるね。
無理はしないで。元気なフリなんてしなくていいから。グータラしてたっていいんだよ。
生きているってこと自体が奇跡だから、私は、君が生きている奇跡に感謝します。
じゃあ、またメールするね。