なにか新しいこと日記

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夕食後の読書タイムに読んだ本【2024年2月】

2月は自宅のライブラリから8冊読んだ。
外出もそこそこしたんだけどKindleでもよく読んだ。やっぱり活動的なほうが、本もたくさん読めるんだな。

1.禍いの科学

数か月前にえむさんが読んで、おもしろそうだったので借りて読んだ。

1章読むのに約30分。1月29日〜2月6日まで3時間30分で読了。

科学とは未知の領域を探求していく過程にあるもので、ある時代に「科学的に証明された」と言われることでも、後から間違いがわかったり覆されるのはよくあることだ。

優生学は1900年初頭に流行し、世界中で爆発的に広まった後、1952年にユネスコによって否定された。

(ところが、わが国では1948年に旧優生保護法が制定され、1996年に改正されるまで全国で2万5000人に不妊手術が強制された。優生学の元となる説が1952年に否定されているのに、そこから派生した法律が50年も続いたなんて……おそるべき愚行だ。)

メガビタミン療法も、民間療法として話に聞いたことがあったが、この本に書かれた顛末を知ったら、あきれかえった。

間違いとわかったことはさっさと正せばいいのに、そうできないことはたんに間違えることより、なお愚かしい。

 

2. 絵になる東京の建築

新宿西口ブックファーストの地下、建築コーナーで購入した本。

2月7日〜9日まで。1時間25分で読了。

この本のすごいところは、建築家であり都市設計のエキスパートである著者自身がイラストを手がけ、イラストと文章が一体となって効果をあげている点だ。

例えば、横に長い形をした東京駅の全景を簡略化して見開き2ページにおさめ、創建時、戦災復興時、2012年の完全復元時と3種類の姿を同じページに並べて解説している。また、豪華な教会建築では特徴的な部分を強調して描き、他の部分は簡略化するといったテクニックによって、見せたい部分を効果的に読者に伝えている。さらに建築物の高さや空間配置はゆがめることなく、正しく描写しているという。

建築に特化したイラストの技法に触れたコラム、『写真でなく、絵で描写し、解説すること』もおもしろかった。

類似の本があれば、ぜひ読みたい。

3. 復興建築

『絵になる東京の建築』と同時にブックファーストで買った本。

2月11日から、1時間ほどで読了。

1923年。今から100年前に関東大震災が起こり、当時の東京市、横浜市に甚大な被害を出した。被害の大部分は地震後の火災によるもので、このときの教訓から新たな都市計画では火災対策が強化された。

当時ヨーロッパではアール・デコが流行しており、この時期に復興された建物にはアール・デコの気配を感じるものも多い。

イントロダクション『復興建築図鑑』に掲載された建築の多くはこの100年の間に解体されたが、後半の『復興建築タイムスリップMAP』に掲載の建築は現存しているものも多い。

前半の『帝都復興計画から東京をたどる」も、現在の東京のベースとなる区画整理や道路網、橋梁など、都市計画についてコンパクトにまとまっていて勉強になった。

4. ようこそ地獄、奇妙な地獄

この本は1年前に新刊で購入した。その頃読んだBLで地獄の十王を主人公にしたものがあったから、興味をもって買ったんだと思う。

2月18日から23日まで2時間10分で読了。内容が詰まっているので読むのに時間がかかった。図版も多いし、朝日新聞出版のわりに(←失礼)紙質もいいんだ、これ。朝日新聞も古典に関しては、後世に末長く伝えたいという意思があるんだな。

地獄の十王については141ページあたりに詳しく書いてあった。中国で生まれた十王信仰が日本に渡り、日本で新たに作られた『地蔵十王経』 が古典文学に大きな影響を与えた。人々と仏教との結びつきを強めるため、また遺族のグリーフケアのため、10回も法要を行い、それぞれを別の王が司ることになっている。閻魔王は死後35日目、五七日(いつなのか)の法要を司る5番目の王だ。

『往生要集』『日本霊異記』など、名前だけ知っている古典文学の内容がどんなものだかわかっておもしろかった。紹介された図版のうちいくつかは国会図書館や海外の美術館のデジタルライブラリにて公開されている。(巻末の文献紹介にくわしく書いてあった)

これまで古典に興味を持ったことがほぼなかったが、いくつかは見てみたいな〜と思った。特に、幕末から明治に活躍した河鍋暁斎についてもっとよく知りたい。
『暁斎画談』は川崎市民ミュージアムのサイトで閲覧可能だ。(最初の方を少し見たら、イラストの描き方のお手本が載っていた)

川崎市民ミュージアム 画像閲覧サイト:コンテンツ一覧

5. 翻訳夜話

これ、どこで買ったのか忘れたけど、しばらく積んであったものだ。
2月23日から27日まで。90分で読了。

4年前に開催されたエドワード・ゴーリーのイベントで柴田元幸先生の話を直に聞いて翻訳に興味を持つようになった。

『世界的コレクターと翻訳者、編集者が語るエドワード・ゴーリーの魅力と謎』イベントレポ | 奇怪文庫

一方村上春樹といえば、忙しい小説業の傍ら、膨大な数のアメリカ文学を翻訳し、世に送り出したことで知られる。
そのうちいくつかは、春樹さんが翻訳した原稿を柴田先生のもとに送り、文法解釈上の誤りがないかチェックを受けるといった協力関係があって、出版されているそうだ。

翻訳に情熱を注ぎ続ける、2人の翻訳者の掛け合いがおもしろかった。

春樹さんが翻訳を手がける理由として「自分で文章を解体して、どうすればこういう素晴らしい文章を書けるのかということを、僕なりに解明したいという気持ちがあったんだと思います。英語の原文を日本語に置き換える作業を通して、何かそういう秘密のようなものを探り出したかったのかな。」なるほど、そういう理由だったのかと納得した。

6. 美少女を食べる(マンガ)

2月27日。25分で読了。再読。

表題作は19世紀ロンドンを舞台にした紳士の集まり「悪趣味クラブ」での一幕。諸星先生はこのクラブを気に入っているみたいで、他の本にも登場する。

私は清朝時代の中国を舞台にした妖しい人形譚『月童』『星童』が好きだな。
科挙をめざす将来有望な青年が、父親が購入した人形と瓜二つの美童を愛したことから身を持ち崩す話。諸星先生の話だけでこれだけがBLだ。エッチなシーンだけ、わざわざ水彩調の画像処理になっているところがおかしくて、おかしくて……。別に笑わせようとしてやってるわけじゃないんだろうけど、急なBLに笑った。

親を亡くすと喪に服するため3年も科挙の試験を受けられないなんて。理不尽なようだけど、両親に忠孝を尽くすことを求める中国思想ならではのところだろう。
因習とホラーとBLがまざっていて好きな話だ。どんな悲惨な話もフィクションだから楽しめるってところでもある。

7. アリスとシェエラザード(マンガ)

2月28日。15分ほどでさっと読む。

19世紀末のロンドンを舞台に「人探し」を請け負う2人のレディを描いた連作シリーズ。『アリスとシェエラザード』っていうのは、そのまんま『栞と紙魚子』をヴィクトリア期のロンドンに置き換えたんだな。なるほどね。金髪のアリスのほうが霊能力者で、黒髪、めがねのシェエラザードが武術の使い手だ。

おもしろいけど不気味が話が多くて、いいね!

8. アリスとシェエラザード〜仮面舞踏会〜(マンガ)

2月29日。20分で読了。

『アリスとシェエラザード』続き。悪役のジュディスとの小競り合いがいいね。

このジュディスっていう人、『西遊妖猿伝』のサソリ女と顔が同じなんだよな〜。つねに憤怒の表情をしている。ジュディスにはもっと活躍してほしい。

終わりに

『復興建築』を読んだ後、横浜に行ったら、それらしい建物がいくつもあっておもしろかった。
有隣堂本店で『かながわ昭和たてもの散歩』を買ったから、それもそのうち読書タイムに読もう。

日時指定チケットまで買って楽しみにしていた『フランク・ロイド・ライト展』は、人が多すぎて隅々まではとても見切れなかった……。東京の展覧会って、いつもこう。ガウディとライトで懲り懲りしたから、建築系の展覧会はもう行かないかも。もう少し人が少なければもっと楽しめたと思うけど、今後期待はすまい。

それより、本で見たり実際に足を運んで、建築物を見たりするほうがおもしろいなって実感した。

2月の後半に諸星先生の新作を読んだので、この後続きで「特選集」4冊を再読したい。再読こそが読書の醍醐味。(再読ばっかりしてると未読の山が減らないんだけどね。)