【感想】『もう、沈黙はしない・・性虐待トラウマを超えて』を読んで

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矢川冬・著『もう、沈黙はしない…性虐待トラウマを超えて』を読みました。

私はわっとさんのブログを読んでこの本を知ったのですが、あまりに重い内容で、すぐには手に取る勇気が出せませんでした。

わっとさんの記事はこちら:

その後、わっとさんが近隣の県立図書館を巡って書籍の寄贈をしているという記事に触れ、勇気を出して私も2冊注文しました。

もう、沈黙はしない・・性虐待トラウマを超えて

もう、沈黙はしない・・性虐待トラウマを超えて

 

オンデマンド本の性質上、公立図書館では購入が難しいそうです。1冊は自分で読み、1冊は近所の図書館に寄付するつもりで注文しました。

著者の矢川冬さんがご自身のブログで「図書館寄贈状況一覧表」を公開していらっしゃいます。もし「公立図書館に寄贈してみようかな」と思われた方は、下記のリンク先をご覧いただければと思います。

私の書いた書籍の紹介 カテゴリーの記事一覧 - 性虐待と闘う、矢川冬の場合

私の感想

この先の私の感想は、当事者でない者として、同じ立場の人に向けて書いてみたいと思います。

・・・

本の内容は苦しいものです。ですが、矢川さんは性虐待の当事者が読むことを念頭において、そうした方がなるべく冷静に読むことができるよう最大限配慮して書かれたのではないかと思います。
私が読んだときは、虐待行為に憤りつつも、なんとか落ち着いて読み通すことができました。
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)のように極度に敏感な人と、虐待の当事者以外は、この本を読んだからといって、ひどく混乱することは少ないように思います。

書籍の内容紹介

  • 1〜2章では矢川さんが直面した性暴力事件を発端として。その後の矢川さんが歩んだ道のりと、本を出版した経緯について。
  • 3〜6章:戸籍名の変更裁判の過程と、裁判に必要な「心理状態鑑定意見書」の内容を紹介。
  • 7章:今矢川さんが取り組んでおられる、少女の自立のためのシェルターについて。
  • 8章:矢川さんが出会われた支援者たちの紹介。
  • 9章:当事者が書いた本の紹介。
  • 10章:加害者が家族であるという特殊性をどう理解すべきか。
  • この本の収益は、全て少女の自立のためのシェルターに使われること。著者の矢川さんは、この本が日本の全ての図書館におかれることを願っておられることが巻末のp172に記されている。

本を読んで私が考えたこと

  • 性虐待は加害者だけではなく、家族全体の問題である。子どもを家族の病の犠牲にしてはいけない。外部の者は、兆候を感じたら子どもの話を注意深く聞き、すみやかに加害者・家族から引き離すよう、しかるべき機関に通報するべき。
  • 週数回程度の学習塾でさえ、虐待を受けている兆候のある子を何人か見たという。小学校、中学校であればもっといるのでは。
  • 性被害は「隠される」性質がある。本人が隠したいこと・話しづらいことを、丁寧に聴き取りするのは難事業だろう。また家族からの聴き取りなど不可能に思える。
  • 現場で対応する人に対して、細やかな教育・研修が必要。
  • 苦痛を乗り越え、勇気をもって社会に発言したサバイバーの声を無視してはいけない。誰かがその声を聞くべき。そして、受け取った者は何か一つでも行動して、その声に報いる必要がある。

特に紹介したい部分

加害者研究の重要性(p68)

加害者には加害をした自覚がない。「患者として表面化していない」と矢川さんは言っています。
これは重要な指摘であると思います。加害者がそもそも病んでいるのに本人が気づいていない、家族も見過ごしてしまう。そうしたときに家庭内で暴力がふるわれ、社会に発覚することもない。これをどうしたらいいのか。加害者研究だ、というわけです。

許しを必要としているのは、加害者ではなく被害者(p64,67,83)

セラピストが「被害者は加害者を許すべきだ」と言い出したり、自助グループの中で「加害者に罪を問うのではなく、被害者が変容することで問題が解決される」といった考えを持つ人もいて、そういった人たちに矢川さんは深く傷つけられてきたと言います。
上記のような言い方は、なんの罪もない被害者側に責任を負わせるに等しいのでは。

「許されるべきは被害者」という言葉は、重いです。どうして、被害者が他人から責められたり、自分で自分を責めなくてはいけないのか。私たちは被害者の声をよく聞き、この人たちをこれ以上傷つけるようなことを言ってはならないと思う。

性犯罪の根本原因は、家庭内の性差別にある(p80)

「結婚制度にこそ、性差別の温床が潜んでいる」という矢川さんの指摘はショッキングです。
しかし、そうだろうなと思います。私たちの親世代を見ていても、未だに性差別的な言動が多く不快な思いをすることがある。世代交代するにつれ、徐々に若い世代の意識は変わっていると思いますが、結婚制度が改革されるまでには今後まだしばらく時間がかかることでしょう。

ささやかでも私にできることは「あらゆる差別的な言動を許さない、拒否する、できる限り指摘する」「自分の中の常識を疑う」ことでしょうか。当たり前だと思っていた価値観を否定されると、自分の根底を覆されるような恐怖や抵抗感が生じます。周囲と軋轢を生むことにもなりかねませんが、それでもできる限り抵抗していきたい。

その原動力はなにかといえば、尊敬する上野千鶴子先生の言葉をお借りして言います。

「私の中に差別を許さない矜持があるから」です。

終わりに

この記事を読んだ方が1人でも多く、矢川さんの著書を手に取ってくだされば、うれしいです。

もう、沈黙はしない・・性虐待トラウマを超えて

もう、沈黙はしない・・性虐待トラウマを超えて

 

すでに各地の図書館にも寄贈の波が広がっています。お住まいの都道府県立の図書館で所蔵している場合は、市区町村の図書館にリクエストを出せば、簡単に取り寄せて読むことができます。ぜひ、リクエストをしてみてください。

 

あなたがこの声に耳をすませることによって、もしかしたら将来、どこかで誰かを助けることにつながるかもしれません。
あるいは、直接のアクションとしてだれかを助ける機会がなかったとしても、性差別・性暴力を理解することによって、つながりのある人に「差別をしない、させない、暴力を起こさせない」ことも大事だと思う。

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当記事から矢川冬さんの著書を購入していただいた場合、収益は公立図書館への寄贈に充てさせていただきます。