食後に30分タイマーをつけて読書をするシリーズ。3月も粛々と読んだ。
1. 男たちの風景
3月2日。35分で読了。再読。
SFは好きじゃないのに(食わず嫌いしてるだけかも)なぜかこのシリーズは好きで何度も読んでしまうのは徹底してディストピアだからかな〜。
腹部に女の顔を持つ巨大な鳥(ハーピー)の話。男だけが急速に老いる土地の話。女だけを乗せた宇宙船「貞操号」が未知の植物に飲み込まれる話……。
生殖をテーマにした話が多く、現代社会を皮肉った不気味な話ばかりを集めている。70年代に描かれたものがメインだが、50年経っても古びない。名作ぞろいのシリーズだ。
2. 子供の情景
3月4日。25分で読了。再読。
わざと成長を止める薬を飲んで、子供の姿をした大人たちが街にあふれる。その醜悪さ。知らず知らず人間がロボットに置き換わってしまい、ロボットだらけの街をさまようとか……。
社会で当然とされている「常識」や「ルール」になじめず、途方に暮れる人を象徴的に描いているようにも思える。だから突飛な設定でも、心情は理解できるし読みやすいのかも。
「新宿の目」をくぐって中に入ると、地下へつながる秘密のシュートになっている……という話(『夢みる機械』)があって、この設定、すごく好きだ。
3. 遠い世界
3月13日。25分で読了。
『遠い国から』の4作が好きだ。この特選集4冊の中で一番好きな話かもしれない。スーツに山高帽の男がカバンを持って遠い国を旅する、そこには「カオカオさま」だとか、われわれの地球にはいないであろうふしぎな生き物がいたりして……異世界なんだよね。『旅のラゴス』とかショーン・タンの『アライバル』とか、異世界を旅する話には心惹かれる。
あと『ブラック・マジック・ウーマン』を読んで爆笑した。裸芸って、つい、笑っちゃうね。「とにかく明るい安村」は海外でもウケていると聞く。やっちゃいけないことをわざとやるから、おかしいのかなー?
しかもこの場合、男でなく女の裸で笑わせるのが痛快だ。エロくなくて、ただただ、おかしい。女性の裸がエロいものとして扱われていないっていうところがまた痛快だ。
4. 蒼の群像
3月13〜14日。25分。
この本は異世界ファンタジーじゃなくて、現実の日本社会を舞台にしているんだけど、どこかがおかしい。昔の『世にも奇妙な物語』の雰囲気がある。秀逸。
5. 知の格闘
3月14〜17日。1時間45分で読了。
政治学者の御厨貴(みくりやたかし)先生が東京大学先端科学技術センターを60歳でお辞めになったときの最終講義を書籍化したもの。最終講義って普通1回で終わるものらしいが、このときは3部構成で全6回の講義をしたそうだ。(2011年当時)
長年取り組んでこられたオーラルヒストリー、震災復興の提言などの公共政策に関わるもの、明治天皇と天皇論、政治権力者と建築の関係、書評と時評、メディア出演など。活動分野は多岐にわたる。それらをざっと振り返り、著作や仕事を紹介したブックガイドとしても、この本は使える。
御厨先生の舌鋒は鋭く、人の心に刺さる。優れた政治学者なんだと思う。今後何年かかけて著作を追ってみたい。
6. すごいぞ!はたらく知財
3月17日〜19日、25分で読了。
文学、音楽、映画、舞台、テレビ、芸能、キャラクター、アニメ、ゲーム、伝統工芸、アート。11分野から、それぞれ専門家を呼び、いくつもの権利が複雑に絡み合う「知的財産権」について、ケーススタディのようにして紹介しているのがわかりやすい。
「著作権」「著作人格権」以外にも関連する権利はこんなにあるんだ……と、ある程度網羅されているのが、この本の便利なところだ。しかも中学生でもわかる簡単な言葉だけで、250ページ(新書1冊ぐらいのページ数)にまとまっていて、字が大きいところもいいね。(なんで、こども向けの本って字が大きいんだろうか)
7. 日本経済超入門
3月19日再読、40分ほど。
2014年に出た本をただ再読してもしょーがない。当時のデータと現在とをネットで調べつつ、引き比べて読んだ。大体は政府統計を使用していて、巻末に引用元が書いてあるので同じところから引っ張ってきて調べるといい。
日本経済の凋落が激しく、数字を見ていたら悲しくなった。
8. スターハウス 戦後昭和の団地遺産【ギブアップ】
3月23日ごろ。1hかけ、途中まで読んで切り上げた。
3月末、赤羽にある『URまちとくらしのミュージアム』の見学ツアーに申し込みしていたので予習として読んだ。パートナー、えむさんの蔵書で彼は5時間ほどかけて読み通したらしいが、私には難しすぎて、ところどころ読んだだけで終わった。
建築に詳しくない人が読み通すのはかなりつらい。だけど紹介されている図版、鳥瞰写真とか、おもしろいので興味のある人は図書館で借りて読んで!
9. ネオノミコン
3月25〜28日まで。80分で読了。
2022年〜2023年、国書刊行会は50周年記念フェアを開催し、あちこちで記念の小冊子を配っていた。それを読んだらおもしろかったので、以来注目している出版社である。
えむさんが「うちにも国書の本、あったわ。しかもクトゥルー×アメコミ」と言い出したので読んだら、おもしろかった!
ラブクラフトに題材を取ったホラー『中庭』と『ネオノミコン』2作が収録されている。前者は見開き2ページを縦の四コマに切り、後者は1ページを横の四コマに。両者とも四コマなのが斬新で驚いた。
簡単に言うとFBI捜査官がカルトの捜査中に異形のものに遭遇し、魅入られて中に取り込まれてしまうという話だ。
2話目なんて女性がひどい目に遭う話なのでイヤなんだけど、ドラマの演出がすごい。コンタクトレンズを外したまま事件に巻き込まれ、四コマの中でクリアに見えているコマと、主人公視点でぼやけて肝心なところが見えないコマが交互に繰り返され「え〜〜どうなってるの、これ」スリリングだ。
原書は2010年代に描かれているらしいが、サイケなんだよなあ〜。もしかして80年代の話なのかな。めちゃめちゃ好きだ、これ。
『ネオノミコン』シリーズ4部作はぜひ集めて読みたい。
これを読んだら、去年えむさんといっしょにプレイして気に入った『チャント』というカルトをテーマにしたゲームの世界観がより深く理解できた……と思う。アラン・ムーア好きだわ。他も読もう。
10. 地図で読む松本清張
3月28〜29日。1hで読了。
2022年、小倉にある松本清張記念館を訪れる前に買って積んでいた。
これを読んだら、松本清張の作品ってトラベルミステリーだったんだな。だから映像にしたとき映えるし、ロードムービーとして楽しめるわけだ。
あらすじ紹介で主要作品のネタバレを読んじゃったけど、ネタバレを読んでも人物関係が複雑でよくわかんないなとか、中にはちょっと無理筋じゃないかと思うものも混じっている。まあ、それはそれとして、いくつかやっぱり読みたいと思うものがあった。
番外編:怪奇クラブ
3月4〜10日ぐらい? 3時間ほどかけて読了。図書館で借りた本。
諸星大二郎の「悪趣味クラブ」は、このオマージュだとえむさんから聞いて取り寄せた。スティーヴン・キングにも似たようなのがあるから、それもオマージュだろう。
訳出が1970年と古いため、えむさんは早々に脱落。私にとっても、まあ古いけど、こども時代に読んだ児童文学ってこんな感じだったな〜と懐かしく感じる言葉遣いであった。
ダイスンとフィリップスという2人の紳士が、いろんなところで聞き集めた奇談をお互いに披露し合う。その中に「眼鏡をかけたヒゲの若い男」が名前を変えて何度も登場し、読者としては「話の辻褄が合わないが、登場する若い男は同一人物なんじゃないか」と疑うわけ。結末ではこの人物の無惨な遺体が発見されて唐突にジ・エンドとなる。
この本をXで紹介していた人のブログに、考察記事があって(それもえむさんが教えてくれた)ある程度わかった部分もあるが……
奇妙な世界の片隅で 邪悪な物語 アーサー・マッケン『怪奇クラブ』
全部謎が解けてすっきりとはいかず「だから、なんなんだ?」と狐につままれた気持ちになる。
アーサー・マッケンは半世紀前の作家だが、区の図書館で検索すると100件以上出てくる。よほど愛された作家なのだろう。こんな複雑な話を、よくもまあ、みなさん読みこなして理解し、愛したものだなとそっちのほうに感心した。
終わりに
3月は前半に諸星大二郎を再読。諸星先生に影響を与えたというアーサー・マッケンを一応読んで(一度では読みこなすところまでいかない)あとは自分が勉強したい分野の資料とか基礎本みたいなのをさらっと読んで、最後にアラン・ムーアを読んだ。
図書室に積んである山の中から一応は計画的に「今月はこれとこれを読んで……」というのを粛々とやっているわけだ。
諸星先生を読んでから、アラン・ムーアに行ったのはわれながらいいチョイスだった。(えむさんがアラン・ムーアを読め!というから素直に従ったまでなんだけど)SFとかファンタジーが入ってるのは普段読まないのだが、オカルトは好きだし、諸星先生を読んだ後だからすんなり入っていけたのかもしれない。
読書って読む順番も重要だと思う。