なにか新しいこと日記

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夕食後の読書タイムに読んだ本【2023年11月】

えむさんと暮らすようになり5年。
自宅に図書室を作り、快適な読書環境を求めてコツコツ本を整理している。

今年になってダイニングテーブルを買い替え、不要になったテーブルセットを仮に図書室に運んだら便利になった。考えてみれば、本を整理したりメルカリに出品するのに作業台は不可欠だ。

いっそ、ここで読書もしたらいいんじゃないか!?

コロナをきっかけに電子に移行し、紙の本をなかなか読まないので積読は増える一方だ。夕食後にコーヒーを淹れ、タイマーを付けて30分。分厚くて持ち歩けないような本を、2人して、ここで少しずつ読んでみたら……

長く座って読むのに適した環境ではないが30分だけなら平気だ。やってみると、食後のひととき、休息しつつ読みたい本を集中して読むのはしあわせな時間になった。

30分と区切るから集中力が途切れないし「もうちょっと読みたい」と思ったところでやめるから、次の日も「続きを読みたい」とモチベーションが続く。

読書タイムにスマホを持ち込まないことも大切だ。

この記事では11月の読書タイムに読んだ本をまとめる。

1. 刑務所の読書クラブ

11月3日より、30〜50ページずつ読んで8日間で読了。およそ210分。

イギリス生まれの文学研究者が9人の囚人たちと10の古典文学を読み、意見をかわす。

翻訳の文体に慣れ、「塀の中」という特殊な状況を理解するまで少し時間がかかったが、一度エンジンが掛かればあとはスラスラ読めた。

著者がどのような意図で作品を選んだか、作品への思いが各章の冒頭に述べられ、それを読んだ囚人たちの反応、だれがどういうことを言ったか、彼らの背景にはこういう状況(性格、犯罪歴、家族の状況、支援者がいるかどうかなど、個々に異なる)があって……と描写が続く。

当然のことながら、人によって全然違った感想を持つのがおもしろい。未読の作品ばかりで興味をそそられた。

10章『ロリータ』の頁では、著者が主人公の小児性愛者に心酔する一方で、囚人たちは嫌悪をあらわにする。私も(読んでいないが)彼らと同じような感想を持ちそうだ。いくら文学的な評価が高く当時の社会が許容していたとしても、現在の目で見て、少女が性的搾取される話を楽しむことはできない。

「終わりに」の中で、著者が釈放後の元メンバーに会った話が心に残った。外の社会では彼らには他にやりたいことがあり、本など見向きもしない。そりゃそうだ!

私にしても「夕食後、本しかない部屋で30分読書する」と決めて習慣化したから本が読める。

最初の1冊にこの本を選んだことには意味があり、この本を読もうとしてこの新しいやり方を思いついた。そんな1冊だ。

2. マンガ建築考

11月21日より、50〜80ページずつ3日間で読了。およそ80分。

マンガ好きの建築家が有名マンガに登場する巨大建築物、和風建築、豪邸、個人の住宅を考察する。

例えば『賭博黙示録カイジ』でカイジが渡る鉄骨はなぜたわまないか。『進撃の巨人』の一番外側の壁、ウォール・マリアは軟弱な地盤では到底持ちこたえられないほどの重量があるとか。『花より男子』の金持ち御曹司4人組の家は、イタリア風だったりゴシックだったり、和風の数寄屋造であったり、贅沢なだけでなく凝りに凝っていて……とか。

すっごくおもしろいけど建築の知識が乏しいので用語を引きながらでないとわからない。しかも、ほとんど図版の引用がないから、実物のマンガだったりアニメを見てみないとなんの話をしているかわからないところも多い。それでもおもしろい。

マニアック! これも、元はえむさんの本だ。

年末はここに紹介されていた長編マンガをいくつかレンタルして読んでみようと思う。

3. 遥かな町へ

11月23日。406ページを(ちょっと時間オーバーしたけど)1日で読了。

これは私の蔵書で、2023年2月に浅草橋の書肆スーベニアで買った古本だ。分厚いので買ったきり図書室に置きっぱなしにしていた。

30分で読めるとわかっていればもっと早く読んだのにな〜。向かいで別の本を読んでいるえむさんが「ページをめくるのが早すぎる」と驚いていた。

谷口ジローって、映画を見るみたいに映像体験として流し読みするとものすごく早く読めることがわかった。

えむさんからは「タイムトラベルなんて今更すぎてつまんないでしょ」と言われたが、連載が1998年。当時48歳の主人公が14歳に戻るんだから、時代は高度成長期の日本。鳥取県の倉吉が舞台だ。そんな風景、私は知らないわけだから新鮮でおもしろかったよ!

タイムトラベルというと過去の大量殺人を止めるとか、米大統領暗殺を防ぐとか……最近見た作品だと大事件に関わるものが多かったから、こういう、ごく個人的な家族の歴史にまつわるものは新鮮だったな。

この作品、海外でも人気があり、舞台をフランスにおきかえて映画が作られているそうだ。

4. 古本屋の女房

11月25日より、217ページを3日で読了。(挿絵が多い)

横浜の黄麦堂という古書店(10年前にネット専業になり、今はどうしているのか……)を舞台に古本屋の悲喜交々をお連れ合いの目線で書いたエッセイ集だ。

高円寺の古書会館で装丁が気に入って買ったものだが、よく見るとジャケットも本文中の挿画も全て著者本人が描いたもの。本業は校正で文章は達者だし絵は描くし、篆刻も彫るのだから畏れ入った。田中さんは趣味でいろんなサークルに参加しているらしく、最近は2023年5月に『マツコの知らない世界』に日本豆本協会の会長として出演している。

愛書家らしいエピソードの数々を楽しく読んだ。

最後の章には2004年に黄麦堂が赤字に陥り、移転したときのことが書いてある。横浜の大口で20坪、26万円の家賃を払っていたのだというから驚いた。古本屋ってそんなに儲かっていた時期もあったのか……。

本文中に登場する古書店も大半はもう閉まってしまったのではないか。店主が高齢になり後継者がいないというパターンも多いだろうが……。調べてみると、早稲田の古書店街はまだ生きているようなので、今度のぞいてみたい。