なにか新しいこと日記

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高次脳の弟が住むグループホームを訪問した

2021年6月に実家の弟がグループホームに入居した。
精神障害・知的障害・発達障害がある人を対象として開設されたばかりの新しいホームだ。精神面での障害がある人ばかりを集めたワンルームマンションに、親切なコンシェルジュが付いているような感じ。トイレや風呂などの施設は共用である。

コロナ禍でなかなか訪問できず11月になってやっと訪問することができた。

弟は平日はワークセンターに通っており疲れさせると人に迷惑をかけるため、通所のない祝日を狙って行った。

 

駅からのアクセスは良好。閑静な住宅街の中にある。新築のこぎれいなホームだった。インターフォンを押すと職員のTさんが応対してくださり、挨拶して中に入った。
居室は実家の部屋より少し狭いぐらいの空間で、おそらく南向き。日当たりのいい一階の個室だ。
われわれが部屋の側に駐車したのが窓から見えたはずだが、弟はTさんに呼ばれるまで自分から出てこなかった。ぼーっとしていて家族の車だと気づかなかったのかもしれない。

部屋に大きなクローゼットが付いているのにクローゼットを空にして、衣装ケースやなんかを全てベッドから手の届く範囲に並べ、狭いところで生活していた。

視野に欠けがあるし、空間認識だとか持ち物を把握する能力が乏しいので、全てが見える範囲にあった方が安心なのだろう。(祖父の家を片付けたときに、あちこちの物入れからヘルシーリセッタが出てきたことを思い出す。)

大きなテレビを買ってベッドの足元に置き、『きのう何食べた?』の特番だとか『ほんこわ』だとかを録画して観ていたようだ。
「『きのう何食べた?』なんか観てるの?」と訊くと、主演俳優の名前を口にしたので驚いた。
母の病名は伝えていなかったらしいが、事前に打ち合わせした通り「お母さん、がんができて手術したんだよ」と私が言ったら「それ、前も聞いたよね?」というので、少しは記憶も改善しているようだ。

もしくは、適当に話を合わせているだけかもしれない。
何度も繰り返し話題になったことは記憶に定着している。たぶん、職員の方が実家のことやドラマの話なんかを話題に上げてまめに話しかけてくださっているのではないかと思う。

 

私がたいやきを買って行ったら、母が「Kは甘いものより辛いものが好きだよ」と言って、わざわざコンビニで唐揚げとアメリカンドッグを買い込んでいた。

そんなに一度に食べさせるのは良くない。唐揚げとアメリカンドッグはその場で食べさせ、たいやきは冷蔵庫にしまうように勧めた。

(数日後に弟にメールして確認したところ、どうもそのまま忘れられていたようだ。酸っぱい味がしたら捨てるように言ったが、まずかったなー。ナマモノは必ずその場で食べさせないと自己管理できないのでまずい。電話してもすぐには出ないし「食べました」とか嘘をついて話を合わせようとするので、突き止めるのに苦労した。どうも、人と話を合わせるために小さな嘘をついて「作話」する傾向が以前より強くなっているように思う。短い滞在の間に「作話」していると感じる点がいくつもあった。それだけ今の環境に適応しているとも言える。)

そもそも、私がたいやきのことを伝えたのにわざわざ2つもナマモノを買って持ち込む母心ってやつもなーー。めんどくさいが無下にはできない。しかし、安全のために次からナマモノは一度に食べ切れる量にしなくては……。

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昼はカップ焼きそばを食べたらしい。

開封カップ焼きそばが2つ、自前の冷蔵庫に収納されていた。調理前のカップ麺なんか冷蔵庫に入れる必要もないが……食べ物は一か所にまとめておかないとわからなくなるから、これでいいのだ。

部屋に大きな冷蔵庫なんか置いて、実家の父の部屋とそっくりだった。父の部屋も手の届く範囲にいろんなものが出しっぱなしになっていて、足元にテレビがある。

 

朝晩は弁当が出るが、休日の昼は自分で買った好きなものを食べるらしい。
お金を使うのが下手だから、安いカップ麺ばかり食べているのだろう。

頬にシミができていた。うっすらとした茶色のシミで、最初は汚れでも付いているのかと思った。手で擦っても容易に取れないからたぶんシミだと思う。
栄養が偏ってビタミン不足になっているのかもしれない。実家で栄養管理されている頃はそんなことなかったが、少しでも自己管理させようとするとこういうことになる。この人にビタミン剤なんか服用させるのも一苦労だ。シミの件は、あとで確認しなければ……。

 

いっしょに行った父親は、Tさんに挨拶して近況をチェックしたらさっさと車に戻って行った。
母は病後疲れでぐったりしていた。

次回は一人で来よう。
休みの日にファミレスでも行って、好きなものを食べさせてやろう。野菜も食べさせなくては……。あとはカラオケに連れて行くとか。

 

部屋は新築できれいだし、職員の方もみな親切そうで手厚くお世話され、何不自由なく元気に過ごしている様子が確認できた。
母も弟の元気そうな様子を見て、「良かった、良かった」と安心していた。

私は安心すると同時に、心を削られた。

 

10年以上も実家で面倒を見続け60を越えた両親には相当負担になっていたし、先々のことを考えればこういうグループホームで暮らすのが一番いいとわかっている。
近所にある身体障害者向けの施設には何度もショートステイでお世話になったが、弟の高次脳機能障害については今ひとつ理解されていると感じられなかったし、職員の中には粗暴な人もいて、露骨に「足りない人」扱いされているのを見ると心が痛んだ。
また弟の方でも視覚障害者を侮り、給食のデザートのバナナをかすめとったり、見えないからといって飲み物を買っている人の目の前で堂々と自販機の釣り銭を盗もうとしたり、しばしば悪事をはたらいた。(抑制が効かなくて平気で犯罪行動をしてしまうのも、高次脳機能障害で言うところの「脱抑制」という症状の一部だ。)

グループホームでは人数が少ない分、職員も少数精鋭のようだし、いっしょに暮らしているのは精神面での障害を持つ人ばかり。少なくとも視覚障害者の人の弱みにつけ込むような事態は避けられる。

 

一方で実際に生活している様子を見たらショックだった。
なんにもない平和なときに来て良かったなーと思う。

一度見たから、次からはもうショックを感じないはずだ。

今度行ったときは、もう少しゆっくり過ごせるといいな。

コロナ禍ではなかなか会いに行ける機会もなく、前回いっしょに遊びに行ったのは2019年の佐原のあやめ祭り以来である。

something-new.hatenablog.com

弟はしょっちゅうろくでもないことばっかりやっていて正直に記すのがつらいため、ブログではあまり話題にしてこなかったが、初めてグループホームに入居したので現状を記録することにした。