なにか新しいこと日記

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接客業は向いてないかもと思いつつ、7年が過ぎた

今の仕事を始めて、7年が経った。
接客ありの仕事は私に向いてないんじゃないかと心配していたが、失敗しながら一つ一つ学んでいる。

 

以前の職場に年上の後輩(40代後半、仮に西内さんとする)が入社したとき、彼女が未経験のわりに自信満々で、すっとお客様の懐に入っていける人なつこさがあるのを見て、たじろいだ。
後々わかったことだが、西内さんは水商売(ラウンジ)の経験者であった。男女問わず、今にもしなだれかかりそうな態度で距離を詰め、親しげに話しかける仕草に初めは驚いたが、じき慣れた。
客層が上品なのでそんなことぐらいで怒り出す人はいない。むしろ、こうした接客態度は喜ばれるもの(かもしれない)と学んだ。
アイシャドウは濃く、まぶたの上がラメでギラギラしている。コロンの香りはツンとして休憩室にしばらく残るほど……。
この仕事をするようになって数十人の女性同業者を見てきたが、ついぞお目にかかったことのないタイプだ。

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最初はとにかく違和感が強かった。しかも、なにかとルールを逸脱し、自己流を通そうとする。
彼女にきちんと仕事を教えなければと焦った私は態度が硬くなってしまった。のちに「鉄面皮」と言われ、冗談のネタにされたぐらい仏頂面をしていたらしい。
先輩も彼女には手を焼いており、ときに激しくやり合う姿を見て、これではいけないと私は態度を改めた。業界経験では私の方が3年先んじているが、彼女を人生の先輩として敬い、自分が先輩と西内さんの間の緩衝材として立ち回るよう努めた。

一旦心を開いて接してみれば、同僚としての彼女は楽しい人だった。いつも笑わせてくれたし、お互いに冗談を言い合い、情報交換し、1年間、いい雰囲気でコンビを組み、仕事できたと思う。
最後の最後に、社内トラブルがきっかけで仲違いすることとなってしまったが……同僚として学ぶところは大いにあった。

  • 年上の後輩に対してどう指導すべきか。
  • 人生の先輩として敬い、教えを受けるべき部分もある。
  • ちょうどいい距離を保ちながらも親しみある接客態度とはどういうものなのか。自分なりのスタイルを考えるきっかけをくれたのも彼女だった。

西内さんには大変感謝している。

だから、退社後、ヤフー知恵袋に悪口を書かれたことも、恨んでないよ!

 

あれは西内さんが社長とケンカして、辞めさせるの辞めさせないのという話になった後。彼女が非番の日に、ある女性顧客が来店した。
「あれー、今日はあの人、いないの?」
「はい、西内ですか? 今日はお休みです」
「良かった〜、私あの人苦手なんだよね! なれなれしいでしょう!」
「えっ、そうですか……」
先輩たちと、顔を見合わせた。
「なんかさ、私のこと、お金持ちだと思ってすり寄ってくる感じが苦手〜。その点、あなたたちはいいよねー。無愛想だもんね!」
笑っておっしゃるので、こちらも笑ってしまった。

まさか、無愛想だもんね!と褒められることがあるとは……。
私も他の同僚2人も、お客様の懐事情を推しはかって態度を変えるような真似はしない。いつも同じようにニュートラルな接客態度を心がけているつもりだ。
それを評して「無愛想」と言われたわけだ。

このお客様。下町育ちの気さくな方で、来店するたび西内さんと親しげに会話が弾んでいたのに、内心では快く思っていらっしゃらなかったなんて……。
接客の奥深さを学んだ出来事だった。

 

西内さんはとにかく営業がうまく、裏で社長の顧客を引っこ抜いて退社後はしばらくフリーで稼いでいたらしい。数年後、故郷に帰り、自分の店を構えたと風の便りに聞いた。
たぶん、地元の人に愛され、繁盛しているのだろう。
何事も自分流を通し、やりたくない仕事は「私、パソコン苦手だから。できないから!」と言い張って「できないフリ」を演じているのは薄々気づいていた。(だって〇〇の職歴があるのにパソコンできないなんて、そんなわけがない。)
心を開いているフリをして二枚舌を使い、ちゃっかり自分の利益は確保する。そういうズルい一面もあったわけだ。

 

当時、30代前半の私は彼女に圧倒されっぱなしで、情けない限りだったが、今となってはあれもいい経験だったな……と感じる。
接客が不器用でも、営業が下手でも、一つ失敗すれば一つ学ぶ。そのくりかえしで成長していけばいいじゃないの。

西内さんのやり方も決して否定はしない。ただ、私は私の道を行くのみだ。

そして、邪心があればお客様は敏感に察知するのだと学んだ。
いつもニュートラルで、どなたにも同じような態度でいなければ……。
お客様と距離が近づきすぎるのは無用なトラブルを生む結果となりやすい。現在は適度な距離を保ちつつ、少しだけ親しみのある接客を心がけている。

接客に「これが正解」というのはないし、職種によってもそれぞれスタイルは変わってくるだろう。そこがおもしろい。
今の仕事は、私にそこそこ合っていると思う。地道に経験を積み、スキルを磨いてサバイバルしたい。