なにか新しいこと日記

当サイトではアマゾン、楽天のアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。

コロナと私の個人的記録 2021年6〜7月

6月2日に知人が亡くなった。
以前に勤めていた店の店長で、同い年だった。

元同僚から訃報がもたらされたとき「もしかして……自殺?」の文字が脳裏をよぎった。

 

翌週オーナーに電話をして事情を聞いた。
「10日ぐらい具合悪かったんだと。前日も『調子悪い』って休んだんだよ。夕方『悪いから』って店に顔出してよ。次の朝出勤してこなかった。Tさんに家まで見に行ってもらって『車があって玄関の鍵がかかっていたら、警察呼べ』って言ったんだよ。それで警察呼んだ」

 

そういうときは迷わず警察を呼んでいいのだと知った。
オーナーの前職は警察官だ。いわゆる「孤独死」の現場にもきっと慣れているんだろう。

「じゃあ、病死ってことですか。病名は?」
「腸管出血だって。飲み過ぎだな」
「ああ〜」
「いろいろあったけど…………いいところも、あったよな」
「いいところも、ありましたよね」
口が揃った。

 

100kgの巨体に似合わず繊細な人だった。いつも強がって自分を大きく見せようとして、弱音なんか吐かない、吐けない。そういうタイプの人だった。

不摂生で、私からしたらゆるやかに自殺しようとしているようにしか見えなかった。
きっと彼は自分のことが好きじゃなかった。だから自分を大切にしなかったのだろう。

 

人なつこい人だった。仏頂面の下に人を構いたがり、構われたがりの顔を隠していた。
こんなにも早く逝ってしまうなんて。残念だ。

 

6月中旬。
どうせオリンピックが始まる頃からまた陽性者が増え出すだろうと思い、その前に友人と会ったり、実家に帰ったりした。

酒飲みながらの方がいいような話を、シラフでするのは変な感じだ。ノンアルコールビールで乾杯したけど不味かった。

 死んだ同僚の話もあれこれ。私の知らないろくでもない話を友人から聞かされた。

嘆息……

 どうして、そんなに言葉でグサグサ人を傷つけるようなことばっかりしたんだろう?
ほんの少しでいいから、人に優しさを分けてあげたら、ちゃんと少しは優しさが返ってくるもんだよ。

そうは思えなかった?

容姿とか学歴とかいろいろ気にし過ぎてズタボロで、人になにかを与えるどころじゃなかったのか…………??

私はキミのことそんなに嫌いじゃなかったから、いい思い出も覚えててやるよ。
私の友だちを傷つけたことも決して忘れないけどね。

f:id:giovannna:20210813000850p:plain

会食するときは10日以上間隔を開けるようにした。
仕事でつねに人と会っているが、会食はリスクが段違いだ。

 

劇場で1人で映画を観た。
『ファーザー』と『RUN』と『ライトハウス』全部渋谷で観た。

映画館は4月27日〜5月31日まで閉まっているところが多く、再開しても席は1つ飛ばし。1か月も休めば未公開映画が溜まるし、多くの作品を限られたスクリーンの中でやりくりしなければならない。不人気作品はすぐに端に追いやられ、席数は足りないし、上映回数も少ない。予約は「前日◯時から」だとか観客も不便を強いられた。
それでもとにかく、意地になって映画を楽しんだ。

 

7月。東京都の患者数は病床数の2倍に上り、ひたひたと恐怖がしのび寄った。

オリンピック開幕前から駅では2人組の警察官を見かけるようになった。
テロでもなきゃいいけど……つつがなく、さっさと終わってくれるように願った。

 

仕事はそこそこ入っていたので、家と職場をひたすら行き来して過ごした。
昼の日差しは焼けつくよう。4時より前に表を歩こうものなら暑さでふらふらになってしまう。

なるべく冷房の効いたところで時間をつぶし、夕方行動するようにした。マクドナルドのカフェラテが濃くて財布にも優しかった。

 

夜待ち時間が発生したらスターバックスデカフェを頼んだ。

行動範囲のスタバでは、時々店員に陽性者を出して休業していた。
毎日観察しているわけじゃないけど、一旦休んで全員検査してクラスターになっていなければ、該当者のみ休ませ、また店を開けるんだろう。

 

近所の居酒屋はこの夏撤退した。20日間のスケルトン工事の結果、中はがらんどうになり、壁や床が削られ階段に白い粉が散らばった。階段も掃除していけばいいのに、どうやら範囲外だったようだ。

10年以上ながらえた繁盛店だった。今年になってからは緊急事態ばかりで開いている日の方が少なかった。さびしいもんだ。

 

茶店も8時で閉店。夜8時にオフィスを出ると食事できる店がない。てんやの持ち帰りすらできない。

裏通りのバルは1軒、また1軒と、東京都の要請を無視して夜も開ける店が増えた。
だけど生きるために働いているのは私も同じだ。だれが責められる?

テラスで楽しそうに食事する人たちを尻目に「酒類も提供されてるんだろうか。されているんだろうなー」とうらやましい気持ちで通り過ぎた。

 

開会式の日、仕事だった。仕事終わりにふらふらーっと商店街を通りかかったら、居酒屋の店先で炭で焼き鳥を焼いていた。

「店内は、やってないんですか?」
「今は持ち帰りだけなんですよ」
「そりゃーそうですよね」

おにいさんは今何があるのか教えてくれたが、注文を考えるのがめんどくさかったので「あるものを1つずつ下さい」と言って買った。9本買っても900円。このうち、儲けはいかほどか……。

 塩の焼き鳥は驚くほど旨かった。この近所でいちばん旨い。隣駅まで含めて4軒ある中で、ダントツだ。

「これなら毎週でも買いに行きたいわ」
「再開したら、夜飲みに行きたいね」とわが家で評判となった。

 

困難な時期がもうしばらく続くだろう。
小さな幸せを、生きている実感をかき集めて生きていくしかない。

 

ぼけっとした私でさえしんどいのだから、繊細な人はもっとしんどいだろう。

世界中助けてまわるなんて無理な話だ。大切な人だけ手を伸ばしてぎゅっと握るとか、気にかけていることを伝えよう。たった一言。希望を伝えよう。次の約束をしよう。
そうして明日につないでいこう。