なにか新しいこと日記

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【四国旅行】母と2人で四国を代表するパワースポット、こんぴらさんへお参りした

「一生に一度は《こんぴらさん》に行きたい」と母が言うので2人で行ってきた。

かねて同年代の友人と行く約束をしていたのに、その人が母と同じ病気で急逝するという悲しい出来事があり、母はしばらく落ち込んでいた。

それから1年以上経って「体力に自信がない」という母の背中を押していってきた。
「自信があるとかないとか言ってたら一生行けない、そういうもんだよ。1年先延ばしにしたらそれだけ私もお母さんも年を取るんだから。1日でも若いうちに行かなきゃ!」

母も私もこのためによく歩いてトレーニングを重ね、挑んだ。

これは2023年12月4日より、4日間の旅の記録である。

高松空港

高松空港は日本一小さい空港だそうだ。到着後、成田空港と同じ感覚でずんずん歩いていったらすぐにゲートの外に出てしまい荷物を取り損ねた。保安上ゲートの中には戻れないというので、警備の人が持ってきてくれるまでしばらく待った。

母が朝イチで電話をしなければならないというので、さらに30分待った。その間にシャトルバスはみんな出ていった。

「バスはもうないから、タクシーで最寄り駅まで行こう」「うん」

空港2階の土産物屋の一角にある「だしが出る蛇口」から、一杯ずつだしをもらって飲んだ。

高松空港名物「空港だし」のコーナー

タクシーに乗り「《空港通り》駅までお願いします」と言うと70くらいの運転手さんが「高松のほうに行くんですか、それとも……」「琴平のほうです」「それなら《円座》の駅に行ったほうがいい」と親切に、琴電がどういうルートになっているのか説明してくれた。なるほど。乗り継ぎの時間がぎりぎりなので、電車の進行方向に先回りしてもらえるならそのほうがありがたい。

運転手さんはなまりは強いが説明は明快で、楽しい方だった。
「参道に二軒うどん屋があって、そのうち『こんぴらうどん』が美味しいです。こんぴらさんの下の方に歌舞伎の大舞台があるから、それを見学してからお参りするといいですよ」
タクシーってあまり乗らないけど、乗ると有益な情報を教えてもらえるのがうれしい。

運転手さんのおかげで、駅に到着してきっぷを買っている間に電車が着いた。琴電ではなんとSuicaが使える。えらいね!(それなのになんできっぷが必要かと言うと、そんなこと考えもしない母がSuicaを持ってこなかったからだ。)きっぷを買うのに焦ったが、その後、車掌が車内を行ったりきたりしていたからそこで精算することもできたようだ。

電車の中で今日のスケジュールを相談した。2日目は雨の予報だからグズグズしちゃあいられない。着いたらいきなり、こんぴらさんに行かなくちゃ!

琴平駅

乗車30分ほどで琴平の駅に着いた。

琴電琴平駅

駅のそばに背の高い木造の建造物が見え「あれはなんだろう」と寄ってみると高さ27mの「高灯籠」と書いてあった。1860年に作られたもので、ここから発する光は丸亀沖の船まで届いたらしい。琴平から丸亀からは12km。当時は高い建物なんかなく、電灯もない真っ暗闇だから光が届いたんだろう。

高灯籠

高灯籠が夜どういうふうに見えるか、ホテルの上から見ようと思っていたのに、2日とも忙しく忘れて寝てしまい残念だ。

この光、金刀比羅宮からも見えるに違いない。(現在のこんぴらさんは夜間は大門を閉めて人を入れないらしいが、昔は深夜も参拝できたと聞く。境内に灯籠が山ほど設置されているのはそのためではないかと思う)

昼食

ホテルに荷物を置き「こんぴらうどん」を探しに行った。このホテルはただ一つの不満点をのぞいておおむね満足できるところであったが、その一つが致命的にNG(衛生面)だったので今回の記事では紹介しない。

「こんぴらうどん 狸屋」でうどんを食べ、休憩した。

狸屋にて、こんぴらうどん

母が言うには「私、やっぱりこういう関西風のお出汁が好き。関東風のしょうゆ味はどうも口に合わないんだわ」
「私も、うどんが好きじゃないのって同じ理由かも。東京でそば屋に行くとうどんは食べる気がしなくて、いつもそばを食べるもん。ここのお出汁はおいしいね」

自分でも意外な発見だった。そういえば小倉で「資さんうどん」を食べたときも美味しいと感じたから、私もたぶん関西風のほうが好きなんだ。

食後に参道を歩いていたら「こんぴらうどん」の看板を見つけ「運転手さんが言ってたのはたぶんこっちだね。向こうも『こんぴらうどん』って書いてあったから、まちがえたんだわ」「でも狸屋さんも美味しかったね」と話した。

こんぴらうどん(参道)

いざ、こんぴらさんへ

門外(12:23)

階段の前に竹の杖がバケツいっぱいにあって「レンタル100円」と書いてあった。
母は持参した折りたたみ式の杖を出し、私は迷ったが杖なしで行くことにした。足腰に自信がある人は杖なしでも大丈夫。そうでなければ杖を借りるのがおすすめだ。(杖があると体重が分散され「くだり」が楽になる)

階段を上がり始めたのが12時半。そこから本宮まで60分かけてゆっくりのぼっていった。(平均タイムは45分らしい)

階段のスタート

紅葉の盛りは過ぎているが私の感覚では十分きれいだった。12月の1週目ってまだ紅葉が残ってるのに空いててお得だね!
(観光地だからそこそこ賑わっているが、11月の比ではないと聞いた)

四国ではとにかく大勢の韓国人観光客を見かけた。近いからたくさん来ているんだろう。(韓国からは直行便が毎日ある)

彼らは信心もないだろうにあの階段を自分の足で上がってくるんだからすごいよね!

掃海殉職者顕彰碑

参道にはときどき脇道があり、公園や関係施設がいくつも点在している。

その一つ「掃海殉職者顕彰碑」のところでしばし足を止め、由来を読んだ。

戦後、敵国が落とした機雷が瀬戸内海や近海に67,000個も残り、安全な航行の妨げとなっていた。旧海軍関係者を中心に「航路啓海隊」を編成し、6年間で一掃。その危険な任務のため79名が殉職した。彼らの偉業を永遠に讃え、後世に伝えるため碑を建てたとある。

説明を読んでジーンとなった。肝心の碑の写真を撮らなかったのだが当時の吉田茂首相の揮毫だそうだ。

いかりは掃海部隊の旗艦「はやせ」の実物だ。「はやせ」は2002年に除籍されるまで自衛隊演習、災害派遣、ペルシャ湾での掃海任務で活躍し、国際平和と海上交通の安全を記念する象徴として奉納されたそうだ。

金刀毘羅宮が祀る大物主神(おおものぬしの神)は海を司るという。その意味がここで理解できた。

大門(12:48)

大門の前まで来ると、かなり見晴らしがよい。

大門前

階段を上がってすぐの大門は大き過ぎて写真におさまらなかった。

門をくぐると、この先は神の領域だ。

五人百姓の傘

「五人百姓」と呼ばれる五家のみがここで飴を売ることを許されている。

この日は白い傘が4つ出ており、それぞれ飴を売っているおばさんがいた。縁起物なので買うつもりだったが、どの人から買ったらいいか選べず「後で買おう」と通り過ぎたら帰路にはもう傘がなかった。

参道にも「五人百姓」と看板の出た店がありそこでも飴を買うことはできるが、私は飴が欲しいわけじゃなく神域で飴を買うという特別な「体験」がしたかっただけなので、タイミングを逃し残念だった。

書院(13:05)

書院の門前に虎の絵を描いた襖絵の複製画が出ていた。その顔を見て「円山応挙みたい」と思ったら、まさにその通り。有名な犬の絵みたいに丸っこい顔した虎なのだ。

書院 入口

たぶん応挙って実物の虎を見たことがなく、図鑑とそこらへんの猫を参考にして描いたんじゃないかな。

この先、さらに石の階段が続く。

本宮の手前 大階段

本宮の直前に大きな灯籠が並ぶ通りがあった。その全部に人の名前が刻まれている。

灯籠

この近くに「講」の文字が並ぶ一角があった。「講」というのは何人かでお金を出し合って相互扶助をする集まりのことだ。1人では石の一つさえ寄進できなかったとしても数十人だか数百人だかで「講」を作り、財を集めたということだろう。すごいエネルギーと信仰心のたまものだ。

御本宮(13:25)

やっと本宮まで来た! ここまで60分かかった。

本宮

用意していた初穂料を賽銭箱に入れた。(奥の宮までたどる着けるかわからないからね……)

景色がすばらしかった。いい日にのぼることができて良かったな〜。

展望台

本宮から先、柵もないような「山道」みたいなところに石段をところどころ作っている。

『ブラタモリ』によれば、この先は地質が違うため堅牢な建物を建てにくく、それで本宮は手前に建てたのだそうだ。それでも、常磐社、白峰神社、菅原神社とそれぞれ屋根の形や建築様式の違う社がこの先に連続して存在していた。

常磐社

白峰神社

菅原神社

奥社(14:15)

奥の宮の手前に建設用のトロッコみたいなのが見えた。これは、どっから来ているんだろう……。

建設用のトロッコ?

着いた〜〜〜!! 長かった〜〜〜。ほぼ2時間歩き通し!

奥社

本宮と比べたらちんまりしている。横にある社務所のほうが大きいくらいだ。

ひとしきり景色を楽しんだ後、ベンチに座って休憩した。

奥社からの眺望

崖の前に立て看板があって「烏天狗と天狗」と書いてあったのでキョロキョロして探したら、結構な高い位置にあった。

烏天狗(左)と天狗(右)

それこそ天狗の仕業かと驚くような高さに、何者かがハシゴをかけて堀り出したのだろう。鼻の形からしても相当時間をかけて深く掘り出したんじゃないかなぁ。

資生堂パーラー「神椿」(15:05)

くだりのほうが膝に負担がかかるため、時間をかけてゆっくり下りていった。

めざすは『資生堂パーラー神椿』だ。

神椿 入口

階段を降りると出迎えてくれる鮮やかなブルーの壁画は、アーティスト・田窪恭司の手によるもの。

神椿 タイル画

陶板に手描きで絵付けして焼いたのだろう。相当の年月を経ても色褪せることはない。有田焼だそうだ。

サンドイッチだとか、ほかのメニューも美味しそうだったけど、やっぱり名物の神椿パフェを食べてみないとね。

神椿パフェ

このパフェが感動的に美味しかった! フルーツはみかんのコンポート、黄桃とパイナップルのコンポート。ウエハースの代わりに醤油風味の「チュイール」といってパリパリのお菓子が差してあり、ホイップクリームの中には和三盆を使った「シュトロイゼル」というザクザク食感のキューブが隠れている。もちろん、アイスクリーム、わらびもち、あんもそれぞれ上質で美味しいわけ。いろんな食感の中にシュトロイゼルという未知の食感との出会いがあって感激した。

さすが、資生堂パーラーは期待を裏切らない。「銀座のお店も行きたいね〜」と話した。

置いてある『金刀毘羅宮 書院の美』という立派な図録をめくったら、書院にある襖絵が紹介されており、おもしろそうなので「時間もあるし、この後行ってみようか」ということになった。

参考:金刀比羅宮 書院の美 -応挙・若冲・岸岱- | 展覧会 | アイエム[インターネットミュージアム](2007年に開かれた展覧会の模様)

ふたたび書院(15:51)

「書院」は17時に閉まる。ほどよいタイミングだった。

書院

普段公開しているのは表書院のみ。ここでは円山応挙、邨田丹陵(むらたたんりょう)の襖絵が見られる。

いくつも畳の部屋が連続して四方に見事な襖絵が配置され、異なるテーマのアートを楽しめるようになっている。虎、中国の七賢人、「巻狩」といって狩をして楽しむ武将たちの絵図など。おもしろかった。

書院の前あたりの紅葉が、グラデーションになっていて一番きれいだったな。

紅葉

書院のすぐ下にあるこんぴら狗。湯村輝彦というポップアーティストの作だ。

こんぴら狗

昔はこんぴらさんに行けない人が「代参」といって犬に路銀を持たせ、こんぴら詣でをさせたらしい。もちろん、犬が勝手に歩いていくわけじゃないから、同じ方面に行く人が付き添ってヒッチハイクのような形で案内役をしたのだと思うけど……。人の善意によって支えられているシステムだ。

母はばあさまの杖を借りてのぼったので、これもある意味代参になるかなと思う。

門外(16:37)

下り道、日暮れにさしかかった空が美しかった。

お昼に着いていきなりのぼったのは、結果として正解だった。冬は日が短いから。

この時刻には店じまいしているところも多かった。

途中に観光案内所を見つけ、地図をもらったのが次の日に役に立った。

かがわ・こんぴら案内所

初日に旅の主目的を果たしたので、あとは全部おまけみたいなものだ。

母が65歳にして、自力で一番上までのぼったのは大したものだと思う。
私だって母がいなけりゃそこまでしない。2人で励まし合ってのぼったから行けたのだと思う。母曰く「Kさんとの約束だったから、1人でものぼるって決めてた」んだって……。でも、母が1人でのぼるのはさすがに心配だし、いっしょに来られて良かったよ。

母が虚弱体質を乗り越え、自分の力でのぼりきったことは自慢できるし、私も誇りに思う。