なにか新しいこと日記

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肺がん患者・家族の記録《その2》主治医の説明

承前:

something-new.hatenablog.com

 

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9月某日。仕事を半休にしてA病院に向かった。
片道2時間。往復4時間。これだけの時間を営業日に捻出するのも大ごとだ。

最近の大きな病院では入口にある自販機に診察券を入れると自動で読み取りされてレシートが出る。その後受付で係の人からファイルを受け取り、患者本人が診察室に運ぶ。
受付の仕組みから待合室の廊下の配置まで、どこの病院もなんだか似通っている。
母はぼーっとしていたようで、診察室の入口に設置されたポケットにファイルを入れるのを忘れており、予約時間を過ぎてから20分待ちぼうけした。

やっとわれわれの番になり、母、父、私の3人で診察室に入ると、担当医のH先生からご挨拶いただき「ええと、ご主人と……?」「娘です」それぞれ自己紹介をして説明が始まった。
大切な話の聞き漏らしがないようにiPhoneボイスレコーダーで録音させてもらった。録音は後日CDにコピーして母に渡す予定だ。

手術の方法

MRIとPETの画像を見せられ、現段階での診断(病理検査を受けるまでは確定ではないが、悪性腫瘍の可能性が高い)を告げられた。

それから手術についての説明があった。

まず全身麻酔をして組織を切り取り、迅速検査をする。この結果がわかるまで30分ほど。良性であればここで終了だ。
悪性腫瘍なら、そのまま左の肺の半分と周辺のリンパ2か所を切除する。肺の血管は壊れやすいため慎重にはがす必要があり、手術には長時間かかると言われた。

方法としては体を横向きにして側面に4箇所の小さな穴を開け、内視鏡下で組織を取り出す。肺を取り出すときには、2つの穴をつなげて4cmくらいに広げるなどして、中身が漏れないように袋に入れて袋ごと取り出すそうだ。もし手術が難航したら、さらに穴を広げて開胸手術となる。
予想される手術の方法とその後の流れについて、手描きの図を用いて詳しく説明していただいた。

切ったあとの組織は腫れ、少量の空気が漏れて肺の外側に溜まったりするがしばらくすると自然に吸収される。血液や浸出液が出るのでドレン(排水管)を入れて外に出す。数日経ってドレンから出てくる液が透明に近い黄色になれば、ドレンは抜く。

この経過が早ければ1〜2日。長くなればそれだけ入院日数は伸びることになる。
大体10日から14日程度入院する見込みだ。

手術後、取った組織は1週間ほどかけてさらに詳しく調べられ、必要に応じて抗がん剤などの治療が始まる。

合併症

予想される合併症がA4の用紙に20ほど列挙されており、一つ一つについて詳しく説明を受けた。

最悪死に至るような重篤な合併症もあるが、母の病状からすれば確率は低いと言われた。
ほとんど心配する必要のないまれな症状もあれば、ほぼ確実に起こるだろうと予想される合併症・後遺症(たとえば肋間神経痛)もある。
H先生はなるべく合併症を起こさないように慎重に手術を行い、起きてしまったものについては薬を使って抑え、安全に治療すると話していた。
リスクの説明はしっかりするが、患者への思いやりがあり、説明は理路整然としてわかりやすく信頼できる先生だと感じた。

医学の進歩によって、昔は頻繁に起こりやすかった合併症でも今ではほとんど抑えられ、起こりにくくなっていることに感動した。

Q&A

事前に質問しようと思っていた点は、説明を受けるうちにほとんど解消された。
質問したのは下記の2点だ。

 

Q1: 気管支の縫合に使用するホッチキスの針は、その後どうなるのか。どういう素材か?
A1: ホチキスは医療用の金属でできていて、そのまま体内に残る。金属探知機に引っかかる心配はない。肺以外のほかの手術でもよく使われる。

 

Q2: 左の肺の半分を取ったあと、息苦しくなるのか。どの程度生活に影響するか?(リハビリの心配)
A2: 事前に肺活量を測ったところ、十分によい数値が出ている。仮に左の肺を全部取ってしまい数値が半減したとしても日常生活に支障はない。激しい運動はできないし、元通りの水準には届かないものの、時間と共にゆるやかに回復する。

感想

1時間26分に渡って説明を受けた。聞くだけで疲れた。
その後さらに採血とレントゲン検査があり、しばらく時間がかかった。検査、検査で患者が事前にやることは多い。

私は深く考えずスケジュールを組んでしまい、大急ぎで帰ることになった。しかし他の時間を削ったとしても、これだけ丁寧に説明を受けることができて本当によかった。

たまたまファイルの出し忘れで午前中最後の患者になったこと、2人も家族が同席していることから相当心配されていると思い、特に時間をかけて説明してくださったのかもしれない。
肺がんの手術を受ける患者は70〜80代が多いようだから、高齢で長時間話を聞くのがつらいとか、長い話を聞きたくないという人には最小限の説明で終わるだろう。

 

思いやりがあり、よく説明してくださる先生に担当していただけてよかった。ホームページの写真よりにこやかで、ずっと印象が良かった。
キリスト教系の病院ということもあるだろうか。ナース、スタッフもみなさん、笑顔を絶やさず親切丁寧で、入院中にイヤな思いをする心配もなさそうだ。

 

肺の手術は大ごとだが、患者の苦痛が少なく、すみやかに回復できるように医学は大変に進歩している。私が漠然と想像していたより傷は小さく、ダメージも少なく済みそうだ。

治療方法や切除の範囲は病状によって大きく異なるし、5年前、10年前の情報を聞いても古すぎる。外野に惑わされることなく主治医の話をよく聞き、わからないことは医師に質問するのが大切だと思う。
家族としても「また聞き」の情報では信頼性が低く、安心できない。面倒でも説明の日に同席して医師の説明をいっしょに聞くのが最善と考えた。

おことわり:このシリーズでは、おもに《がん患者の家族》として考えたことや取り組んだことについて後追いで記録し、シェアする予定です。リアルタイムの病状について詳しく述べたり、正確な医療情報を提供する目的ではないことをご理解ください。