映画『SNS-少女たちの10日間-』感想・考察

休業明けの新宿武蔵野館で映画を見てきた。
どんな作品か一言で説明すると、童顔の女優3人が12歳の少女に扮し、SNSを利用したらどうなるのか?を実験したチェコドキュメンタリー映画だ。

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映画のあらすじ

  1. オーディション: 応募者に実験の内容を説明し、心理的負担に耐えられるかをたずねる。また、過去にSNSを使用した性的アプローチを受けた経験があるかどうかも質問される。
  2. 準備: スタジオ内に3人分の子供部屋のセットを作る。スタッフが準備したものだけではなく、女優たちの子ども時代の記念品なども本人の手によって持ち込まれた。
  3. 第一段階: チャットでメッセージを交換したり、Skypeでビデオ通話をする。撮影期間は10日間。期間中は、女優の心理的負担を考慮し、弁護士や医師に相談できるようになっている。
  4. 第二段階: SNSで知り合った男たちと、カフェで実際に会う。テーブルの周囲にはマイクが仕掛けられ、近くの席では客を装ったスタッフが待機している。準備〜撮影期間は3か月ほど。
  5. 第三段階: 女優に接触してきた中にはスタッフの知人男性もいた。彼は子どものスキーツアーやキャンプに関わる仕事をしていながら、女優を脅迫するなど行動が悪質だったため、スタッフがグループで自宅を訪れ直接警告した。

なお、映画のために撮影された写真や動画は、警察に提出され、捜査の対象となっている。

ざっくりした感想

どうせモザイクが掛かっているし、大丈夫だろう……と思って観に行ったら、想像以上に局部モロ出し映像(モザイクあり)が続いてキツかった。
あまりにも多くの男性が、12歳の少女(と思っているが実際には成人女優)に向かって嬉々として局部を見せ、ビデオ通話中にも局部を擦る姿を見せてくる。
観客としては、モザイク越しの色や形、手の動きだけでも生々しく「ウエーーーー」となった。

 

また、男たちがなんとかして女優の服を脱がせ、裸体をカメラの前に晒させようと必死になる様子もキモかった。
なだめたりすかしたり。猫撫で声を出して哀願する者もいれば、「きみが手伝ってくれないと射精できない。苦しい。きみが僕を苦しめているんだ」などと理不尽なプレッシャーを与えようとしたり、「このことをきみのママにバラすぞ」と脅迫してくる者もいた。
大人の目から見れば滑稽だが、子ども相手だからこそ通用する手口だ。

鑑賞直後の私の感想は……

12歳の子に「顔出し」でSNSを使わせるなんてとんでもない!
子どもの無知につけ込んで、性搾取しようとする大人があまりに多いことがわかった。

10日間のうちにアクセスしてきた人数は2458人。

子どもたちは大人に誘導されたら、容易に裸の写真を交換したり、会う約束をしてしまうかもしれない。頼んでもいない局部の映像や、ポルノ動画を送り付けられるなんてこともしょっちゅうだ。普通のポルノならまだしも、児童ポルノや獣姦など、違法な動画・不道徳な動画を平然と送ってくる者もいた!

 

この映画を10倍くらいマイルドにしたものをSNS教育に取り入れてもらいたい。また、多くの大人にも見てもらいたい作品だ。

 

この先に私の感想と考察を詳しく記す。
映画に興味がある人は、ぜひ鑑賞後にお読みいただきたい。

解説・考察

1. オーディション

応募者23名のうち、19名が過去にSNS上での性被害を受けた経験があるという。

中には交流していた相手がPCに侵入して、知らないうちに着替えや自慰行為が見られ、映像の一部はネットに流出してしまったと打ち明ける人もいた。
今も過去の記憶とデジタルタトゥーの恐怖に怯えながら、このオーディションに応募してきたなんて……すごい勇気だ!
(この人の勇気は称えられるべきだが、普通に考えて、彼女を採用すれば過去のトラウマを喚起し、撮影中に精神不安定に陥ることは想像に難くない。)

 

オーディションの最中に語られたエピソードは、女性たちが少女時代に体験した「実話」だ。成人だけで行う「実験」とは深刻さの度合いが全く違う。
実際のティーンエイジャーが体験したエピソードやそのときの心情を聞くのは生々しく、また、痛ましくもあり、このパートを観るだけでも勉強になった。

 

少女たちは親への反抗心や性への好奇心から、軽い気持ちでSNSを使用することがある。
少女たちの「動機」を理解し、丁寧にケアする必要がある。

 

私が10代の頃は、ダイヤルQ2とかテレクラだとか、知らない人と通話する手段はあるにはあったが、わざわざ直接会おうとさえしなければ、その場限りの声の交流で済んでいた。

しかし、デジタルネイティブ世代は違う。
顔写真や裸の写真やコラージュが流出したり、アカウント追跡で個人情報がバレたり、ウェブカメラへの侵入、盗撮といった、われわれが子どもの頃にはなかった危険が、今やすぐ側にある。

2. 準備

女優たちは苦しい思いに耐えて、よく撮影に協力したと思う。
なによりもまず、彼女たちの勇気を称えたい。

自宅から子ども時代の記念品を持ち出す場面で、女優の1人は「母から反対された」と話していた。記念品は父が手作りした大きめのドールハウスのような家で、少女時代の彼女は宝物をその中にしまっていた。そんな大切なものを実験に使うなんて、思い出が汚されるというわけだ。
しかしながら、彼女は「私が12歳に戻るためにはこれが必要なの」と言って、ドールハウスを持って行った。

3人全員が同じように、自宅から大切な記念品を持ち出している。
彼女たちの献身と、真剣さには胸打たれた。

3. 第一段階: SNSでのやり取り

新しく作った少女のSNSアカウントに、2458人の連絡が殺到した。
ビデオ通話をすれば、性的な質問や誘い。服を脱いで裸体を見せるようにとのリクエスト。画面の下で性器を擦る者、あるいは、堂々と局部を見せ自慰行為にふける者も多い。
性器の写真も次々送られ、少女の写真も送るようにとリクエストされる。

 

冷静に考えて、12歳の女の子がオジサンの性器を見て喜ぶだろうか?
この人たちは、大きな勘違いをしていると思う。

多くの女性は、好きでもない男性の裸や性器を意に反して見せられると嫌悪感を抱くものだ。だから、そういう人たちを称して「露出狂」という蔑称で呼ぶ。
SNSを利用する女性にセクシャルな話をしたり、性器を見せると喜ばれる」というのは誤解だ。「自宅に招いたらセックスに同意している証拠だ」の誤解と同じくらい、まちがっている。

 

映画では男たちの顔の大部分にボカシがかけられ、目だけがはっきり見えるようになっている。この目がまた、気持ち悪いのだ。目がギラついている者、ニヤニヤする者。

性器や顔のボカシなしで、こうしたビデオ通話を10日も続けた女優たちの心労は、想像して余りある。

中には通話中に突然泣き出してしまう人も……。
見ていて、胸が痛んだ。

 

1人だけ「ただ、人と話したい」という目的でコンタクトしてきた青年がいた。
彼は女優の話を聞くと、「プライベートゾーンは愛する人にだけ見せるもので、よく知らない人に見せるものじゃない。あとで後悔するし、家族も悲しむよ」と優しく諭した。
たまにはこういう《普通の人》もいるようだ。

 

しかし、それ以外の圧倒的多数はそうではない。
SNSで無防備にふるまう12歳は、残念ながら、誘蛾灯のようにろくでもない人間ばかりを引き寄せてしまうのだ。

 

ちなみに、大半の人は小児性愛者というわけではなく、普通の人たちだという。
12歳は「簡単に手なずけられそうだから」という理由で近づいてくるのだ。実に自分勝手で、人を人とも思わない残虐な行動である。

 

未成年者に対し、性器を露出したり、自慰行為を見せたり、あるいは脅迫をするのは法律上、深刻な児童虐待行為として扱われる。

このような虐待をためらわない人間が10日間で2457人も現れたのは恐るべき数字だ。

4. 第二段階: アポイントメント

女優たちはその後、カフェで連絡してきた男性と待ち合わせをする。
現れた人々のふるまいの醜悪さは、SNS上と変わらない。周囲の目があるだけ、少し勢いが弱い人もいたが……。

驚いたことに女性同伴でやってきて「サプライズ! 3Pしよう」と言い放った男もいた。この男性も頭がおかしいが、女性の方も相当おかしい。
会話を聞いていてムカムカした。

 

なぜ、わざわざ危険を冒して、女優を男たちと会わせたのか?

このパートにも深い意味がある。
「12歳の少女に性加害しようとする男たちを反省させたい」

そのために女優は質問の形を取りながら、男たちを追いつめていく。
後半には「パパから電話がかかってきた!」と言って男たちをビビらせる演出もある。カフェでのシーンは全体として、痛快な面もあった。

 

最終的には「あんた最低よ!」と言って、バカでかいグラスに入ったジュースを浴びせかけ、女優が席を立つ場面も……。
彼は、この後、少しは反省しただろうか?

 

たとえ、なんら法律上の罪に問われなかったとしても、ボカシた映像で自分の姿ふるまいが全世界で上映され、晒し者になったことは社会的制裁にはなっただろう。

5. 第三段階: 撮影グループと女優3人で訪問凸

2458人の中にはスタッフの知人男性もいた。
子どものスキーツアーやキャンプを主催する仕事をしている人らしい。
それでいながら、女優への脅迫行為など目に余る言動があったため、監督、女優、知人のスタッフを含めたグループで男性に会いに行った。

 

男性は一瞬、狼狽するが、すぐに開き直って自己弁護と正当化を繰り返す。
「君のほうが悪いんだ。親の教育が悪い。親がまともに面倒を見ないから子どもが非行に走るんだよ」
たしか、そのような言い訳をしていたと思う。

なるほど、そのような思考で自己正当化し、言い逃れをしようとするのか……。

加害者の心理を知ることができて、勉強になった。この場面はただただ、胸糞が悪かった。

 

彼には子どもに関わる仕事をする資格はない。法律に則り罰を受け、仕事を変えるよう願うし、きっとそうなっただろうと思う。

終わりに

私は大人になってからSNSを始め、人と交流して、メッセージを交換したり音声通話したり、実際にアポイントを取って会いに行ったりしたこともある。
マッチングアプリを利用してのデートも複数回、経験済みだ。
かなり警戒して行動しており、今まで危ない目に遭ったことはないが、もし、自分が10代の頃に始めていたら……きっと、程度の差こそあれ、この映画と同じような被害に遭っていただろうと思える。
決して人ごとではない。そして、若い人たちをこのような目に遭わせたくない。

 

10代のSNSの利用に関しては、大人のサポートが不可欠であると思う。
小学生のうちに教育し、性教育も済ませておかないと、中学生になってからでは遅すぎる。
一定年齢までは保護者が監視し、ある程度大きくなってきたら、自由に使いながら困ったときだけ大人に相談できるような信頼関係を作っておくことが必要だ。もしも「反抗期」に差し掛かったときは保護者以外に信頼できる窓口も確保しておくほうが安全だろう。

この記事は私の記憶に従って記した。後から内容についての誤りが見つかった場合は、修正・追記したい。

公式サイト:映画『SNS-少女たちの10日間-』オフィシャルサイト