2月8日に衆議院議員選挙があり、政治への関心が高まった。
小選挙区制に問題があることは明白だが、かといって、どう変えたらいいのか。わが国も2大政党制になるほうがいいと長らく望んでいたけれど、もっとほかにやり方はないのか。これから先の日本を考えるために、もっと政治のことを知りたいと思って本を読み、知れば知るほど、「私って政治のことも、政治史のことも、なんにも知らないんだな……」とわからないことが芋づる式に出てきた。
この後も、しばらく、政治系の読書を続ける。
- 「汚い子」(『わたしたちが火の中で失くしたもの』所収)
- 「要するに」って言わないで
- 証言 小選挙区制は日本をどう変えたか
- 日本の選挙
- 午前二時は食卓で(マンガ) 全2巻
- 立憲民主党を問う 政権交代への課題と可能性

「汚い子」(『わたしたちが火の中で失くしたもの』所収)
アルゼンチンの作家マリアーナ・エンリケスのホラー短編集の一編。えむさんが読んで「意味がわからなかった」というので、読んで謎を解き明かすことになった。以下、思いっきりネタバレあり。
黒魔術の話だ。結末では、通りで暮らすホームレスの母親が、5歳のこどもと、お腹の子を生んですぐに黒魔術に捧げた。
主人公の裕福な女性マミータが、5歳の子を哀れんでアイスクリームを買い与えたため、母親は「黒魔術に捧げるためにここまで育てた子を、この女に取り上げられるかもしれない(もしくは福祉局に連れ去られる)」とおそれ、別の場所に引っ越した。それと時を同じくして、この地域で同様の黒魔術の殺人が起きていたということ。
自分のこどもを殺してまで願いを叶えようとする女の心理がおそろしい。また、似たような事件が、同時多発的にあちこちで起きていることもおそろしい。
しかも、これはファンタジーではなく、現実に黒魔術が今も息づいている南米での日常の風景である。そういうこわさが、この作品の核心だろう。
初めて読むタイプの作品で想像しがたいところもあるが、大体そういうことではないかと思った。
「要するに」って言わないで
𝕏で見かけて手に取った本だ。
著者は尹雄大(ゆん・うんで)。武術や整体を通して得た経験から、身体と言葉の関わりに興味を持ち、対話のセッションをおこなっているそうだ。
この本はすごいインパクトがあって、1章読み終えるごとに休憩し、書いてあることを受け入れるためにすこし時間を取る必要があった。虚心坦懐にして素直な心で読まないと意味がない。そういう本だ。
著者は40歳ごろ、当時の恋人から「家族になろう」と言われて受け入れられず、「人と親密になることをおそれる」自分の心の問題に気づいたそうだ。(p146)
記憶をさかのぼると幼い頃に母親を病気で亡くし、それから人と親密になることを避けるようになった。そこには「自己憐憫」が関係していて、自己憐憫の快楽や、過去の苦しい体験にとらわれ、自分が理解しやすいようにうその物語を作り上げ、その中に閉じこもることで身を守ろうとした。「私がこれまで親密さを避けるために築いてきた関係性やものの捉え方、考え方のすべてが間違っていたのかもしれない」(p161)と気づき愕然としたそうだ。
出来事をありのままに受け入れること。いま感じている自分だけの感情を、なんの解釈もせず、そのまま受け入れること。これだけのことが案外難しい。
他者との対話になれば、なおさらだ。
難しくさせているのは、たぶん「固定概念」「先入観」「世間体」に類するものだろう。一旦、そうした「外部の都合」を捨て去り、自分の事情、相手の事情、それだけを見つめようとする。そのことに価値を置いた本だ。
この本は今年の終わりにもう一度読み直してみたい。
証言 小選挙区制は日本をどう変えたか
政治の本、1冊目は、共同通信が2023年『選挙制度改革の残像』として、1994年の選挙制度改革から30年の節目の年、1年間にわたって連載したインタビューをまとめた本。
当時の内閣総理大臣であった細川護熙(非自民8党の連立政権だった)、自民党総裁であった河野洋平を含め、政治家、研究者に話を聞いている。これを読んだら、当時どのような議論があって、なにをめざして改革したのかおおよそ理解できた。
2023年の段階で、政治家たちがかなり正確にいまの政治状況を予見していることにおどろかされる。好戦的で、国家主義的な強いリーダーが現れ、悪い方向に政治をひっぱっていること。首相が憲法7条の解散権を利用し、強引に議会を解散させて自分の思い通りの改革を押し通そうとしていること……。また一方で、野党が団結して強くなるべきだとも、繰り返し語られている。
なるべくして、いまの政治状況が作られているんだなとわかった。
今のような政治状況を作り出した小選挙区制には問題があるが、かといって後戻りするわけにもいかない。今後考えられるのは中選挙区連記制(1つの区で数人を選び、投票者は定員内で複数を記入できる)、比例をブロックごとではなく全国区で選ぶ、比例と小選挙区の重複は制限するなど。首相による7条解散の濫用を制限することも含め、再び、選挙制度改革が必要になりそうだ。
そもそもの話、政治とカネの問題について、選挙制度改革だけが唯一の解決方法ではないはずだ。それなのに、90年代、選挙制度さえ変えれば全て解決するかのように錯覚して、政治家も国民も押し流されてしまったのは変だ。もっと根本から問い直す必要があるのでは?とも感じた。
今まさに腐敗した権力が膿を垂れ流している。国民は目を離してはいけない状況だ。
日本の選挙
2003年出版、中公新書。選挙制度について、なるべくやさしく解説しているものを探した。
選挙制度は、大選挙区制・小選挙区制・比例代表制の3つに分かれ、長年日本で採用していた中選挙区制というのはほかに類を見ない特殊な制度であったそうだ。歴史的に、わが国で最初の選挙法では小選挙区制だったが、1900年に山縣有朋が大選挙区単記制を導入したことから、のちの中選挙区単記制へとつながっている。(p36)
1925年の改革当時、三つの連立与党の間で大選挙区制と小選挙区制で意見が分かれ、妥協の産物として中間的なものをとったということらしい。三派がそれぞれ当選者が出せるように定数を3〜5名とし、府県を細分する中選挙区制が取られた。大選挙区にしても中選挙区制にしても、普通は定数内で複数書かせる連記制が基本であるのに、なぜか単記制が続けられたことの根拠がわからない。(1900年以来そうしているから、そのまま続けたということか?)
その後の選挙制度改革でも、小選挙区制と比例代表制で意見が割れ、またしても妥協の産物として併立制がとられたということだが、著者の考えではどちらかに一本化することが望ましく、どちらかというと安定した政権運営ができる小選挙区制に統一するべき。人口の増減によって随時区割りは変更されるので、有権者名簿の総数によって調整し、小選挙区を増やしたらそのぶんだけ比例を減らせば、いずれは小選挙区のほうに統一がかなう、としている。
著者・加藤秀治郎先生は現在もご存命(77歳)のようだが、今回の衆議院選をどのようにご覧になったか、意見をきいてみたいものだ。
この本は簡単とは言えないが、比較的わかりやすく書かれていて、「ドキュメント選挙戦」として戦後の主要な選挙についてもコラムにまとめられ、そこもおもしろかった。
午前二時は食卓で(マンガ) 全2巻
えむさんが「おもしろい」と言っていた百合ホラーマンガが2巻で完結したと聞いて、借りて読んだ。
母親を亡くしたばかりの高校生と、道端で出会った令嬢風のお化けの交流を描いた作品。いまどきの若者に向けたマンガだな〜と思うところと(例えば高校生同士のコミュニケーションの取り方、礼儀作法、表紙の色彩)ちょっとレトロなところ(絵柄や人物の髪型、人物の名前の付け方)があいまって、ふしぎな魅力のある作品だった。
「百合」というジャンルは奥が深く、思いっきりガールズラブ!してる作品もあれば、友情百合、姉妹百合など、「恋愛」の枠をはみ出して、より親密な感情を描き出す作品もあり、この作品はどちらかというとそのタイプだ。恋愛未満で、これからなにか始まりそうな、淡い関係に留まるのがリアルで、そんなもんだろうなーと感じた。主人公が高校生だから、人間的にも成熟していないし、突然、どっぷり大恋愛にはなりにくいのが普通だろう。でも、なんか好きかも。相手はお化けなのに……と揺れる気持ちを素直に描いているのがよかった。
おもしろかったし、ホラーマンガとしてもちゃんと怖かった。
立憲民主党を問う 政権交代への課題と可能性
政治の本3冊目。どうしたら日本で政権交代できるのか、その方策を知りたくて読んだ。
タイトルから想像した以上に、話題は幅広く、濃密に書かれ、読むのに時間がかかった。
どんな話題でも(政治思想のパートも含めて)平易な言葉でわかりやすく書かれているので、政治に詳しくない私のような者が読んでも「難しくて、書いてあることがわからん」ということが一切ない点が、まず良かった。
この本は立憲民主党・中道を支持するか否かに関わらず「これから野党はどうするべきなのか、どうしたら政権交代ができるのか」考える上で手掛かりとなりうる名著だと思う。
標題に関係するところだけ、簡単にまとめると、自民党が新自由主義と戦前回帰思想に走り、安倍派がめざした対米従属・改憲路線を推し進める中で、野党は別の道を探るしかない。国民に対し、与党とは別の選択肢を示すことが野党の使命であり、与党と同じ道を進むのであれば政権交代する価値がない。
そのためには、まず、防衛産業や電力(原発)の労働組合の支持を手放し、平和主義の勢力だけでまとまること。中小企業の経営者に対して、平和主義・護憲・分配強化に賛成する人を集め、支持してもらうこと。共産党と共闘すること。
鳩山政権のときに「東アジア共同体構想」が一時持ち上がったそうだが、東北アジアで不戦共同体を作れば、防衛費は減らせるはず。米軍への依存度を上げることは防衛上も好ましくないと書かれ、なるほど、以前に読んだ森嶋通夫『なぜ日本は没落するか』に書かれた「東アジア共同体構想」とここでつながるのか……とわかった。
この案はいますぐには難しいだろうけれど、100年後には実現されているのではないか。個人的にはそうあってほしい、と願う。
この本は、著者が元参議院議員平野貞夫にインタビューして本にまとめる際に、自分の意見を付け加えようとしたら、そのパートが長くなったので独立して1冊にまとめた経緯がある。2021年、5年前に出版されたものだが、政治家や政治学者は流れを理解していれば、その先の政治がどうなっていくか未来が予見できるものなんだなと、改めて感心した。
巻末に列記された参考文献のリストは膨大で、8ページ(80冊以上)に及ぶ。
ここからさらに知りたいところ、よく知らない政治分野について理解を深めるため、何冊か読むつもりだ。





