2023年10月21日。天気のよい土曜日。午後休を利用して都電荒川線に乗車した。都電荒川線は都内でもめずらしい路面電車だ。
東急世田谷線も分類上は路面電車ということになっているが、全区間「専用軌道」を走るのに路面電車とは……なんのこっちゃ!
一方、荒川線は車道を走る区間があり、路面電車らしい路面電車と言える。
今回は全区間乗るべく終点より乗車した。
出発地: 高田馬場駅
高田馬場と言えば山手線発車時に『鉄腕アトム』のメロディが流れるのが特徴だ。
このメロディは手塚プロダクションが高田馬場にあることと「アトムは2003年高田馬場にある科学省で誕生した」という作中の設定から、地域の人々の特別な思いにより作られたものらしい。
ガード下には大きな壁画もあり、撮影スポットになっている。(ここの他にもう1箇所あるそうだ)
メロディと壁画の成立について詳しく紹介した記事:高田馬場は如何にしてアトムの街になったか。 | 高田馬場新聞
時間があれば全体像をじっくり眺めて、なにが描かれているのか見たかったのだがこの日は先を急ぐため写真を数枚撮って終わった。
しかも、この後、目白方面に行かなければいけないのに全然違う方面に歩き出し、10分ロスした。こんなことはよくある。
新目白通りを東へ(20分)
気を取り直してルートを確かめ、北へと向かった。
「上高橋」を渡る。神田川は流れがあって、意外ときれいな印象だ。
橋のすぐ先にはブックオフが。
ブックオフってこんなオレンジだった?(後で調べたら、最近はオレンジとネイビーがあるらしい)
新目白通りとぶつかる交差点には「スタジオノア」がある。
ここ、知ってる。ドラマー時代のえむさんが練習していた場所だ。都内に何店舗かあるらしいが、高田馬場店は駅から近いところが利点だそうだ。ここで右折。
駅前の喧騒がうそのように新目白通りは閑静だった。オフィス街でもあり、このへんは学生が住むには家賃が高すぎるんだろうな。タワマンがあるような場所だ。
遠くからでも視認できる、ワシのマークは大正製薬。
明治通りの手前でまた橋を通った。地図を見ると神田川でまちがいない。随分、蛇行しているが、昔は凸凹の土地だったということか。
交差点では早くも都電の姿が見えた。
交差点の角をえぐるようにして右折していった。
この部分だけピンポイントで車道を斜行するように道が通っているらしい。(この後、都電でここを通るときは、つい、ぼーっとしてどうなっているのか見逃してしまった)
すぐに次の電車とすれ違った。
途中の面影橋駅を通過。駅というか停留所というか……。
面影橋から乗ったほうが近いのだが、今回はあえて「全区間乗車」にこだわり、終点の早稲田駅まで歩いた。
新目白通りには木肌が白い樹木が並んでいた。
プラタナスかな?
そうであれば、数週間後には赤く色づくはず。今年の暑さのせいか葉が少ないように見えた。木が弱っているのかもしれない。
乗車地: 早稲田駅(都電)
迷走した時間をのぞき、高田馬場駅から20分で到着した。(ちなみに地下鉄東西線の早稲田駅はここから750m離れており、同じ駅名にしては遠い。10分ぐらいかかるんじゃないかな。)
なんにもない駅だ。券売機とかそんなもんはない。掲示板と時刻表があるだけ。さっぱりしている。
バスのように前から乗り運賃を支払った。ワンマン運転、全て運転士が対応する。
170円で全区間乗れるなんて安くない? 都営だもんね。もちろんSuica、PASMOが使える。(400円払って1日乗車券を買うと乗り降り自由だそうだ。それもおもしろそう。)
土曜日は6分間隔で運行している。席に座り乗車を待った。
至るところに「降車ボタン」が付いている。全部の駅に停まるだろうにこれはなんのために?(後でわかったが、降りる人がいない駅では降車口の扉を開けずに労力を省いているのだった。)
チン、チン!
運転士が鳴らすベルの音を合図に、定刻通り電車が発車した。
都電荒川線、路面電車の旅(66分)
東京都は高齢者にシルバーパスを発行して優遇しており、乗客には高齢者が多い。そのため途中駅で席を譲ることになったが、またしばらくすると席は空いた。
時折、運賃の支払いでモタモタする人がいる。また、飛鳥山付近では線路と車道が交わり「併用軌道」になっているため、信号待ちをすることになる。(考えてみたら自動車と並走して中央を走る路面電車も、大きなカーブでは必ず車の流れをせき止め、車道の上を横切ることになるのが当然だ)あとはベビーカーの取り回しで乗降に時間がかかったり、単純な信号待ちとか。時間に遅れる要素はいくつもある。普通の電車と違って定刻通りに運行するのは難しいだろう。
雑司ヶ谷の駅の手前でトンネル工事をしていた。駅前でも再開発工事(?)。
向原駅付近では線路の付け替え工事。線路も老朽化しているだろうからメンテが必要だ。
大塚駅前では祭りをやっていて大勢の人でにぎわっていた。東日本震災の復興支援イベントらしい。
「庚申塚(こうじんづか)」の駅では駅中に甘味処があって大いに心を引かれた。
巣鴨の商店街は何度か来ているが庚申塚までは行ったことがない。今度お参りしてみよう。ここは、古くは中山道を通行する旅人たちの休憩地点であり、この地で倒れた人馬の供養をするための場所だそうだ。道教の庚申信仰が神道の猿田彦神と結びつき、また道の神、道祖神とも同一視されているようだ。
参考文献:散策する | 巣鴨地蔵通り商店街
巣鴨では猿の神様を祀っているという歴史的な背景があって、申年の縁起物の赤いパンツを年中売ってるんだろうな(?)
一番景色がおもしろい飛鳥山は、今回ぼーっとしていたら過ぎてしまった。ここは昔一度来たことがあって、路面電車らしい風景が見られる大好きな場所だ。(紅葉の名所なので、もう2〜3週後にまた来てみるつもり)
荒川車庫、荒川遊園地前あたりになると急に子連れ客が増えた。最近のベビーカーは幅があるので都電の車両内では窮屈そうだ。人々も慣れているようでトラブルもなく、のどかに過ぎていった。
都電の中では外国人観光客をまるで見なかった。日本で暮らし、就労しているであろう、アジア系の外国人グループを1組見たぐらい。観光客には都電や都バスの情報は行き届いていないのだろう。ゆっくり景色を見ながら安価に移動できる手段なのだから、上手にアピールすれば観光資源になりそうなのにもったいないね。
後半は完全に集中力が切れて、ぼーっとしていた。
下車地:三ノ輪橋駅
終点の三ノ輪橋駅。そう言えば昔来たときは東京の東側(江東区)に住んでいたから、三ノ輪橋から乗車して飛鳥山で下車したんだよね。
降車場で乗客を下ろした後、空の電車はまっすぐ進み乗車場へ。すぐに乗客を乗せ発車時間を待っている様子だった。
乗換案内では14:06 に出た電車が15:04に到着するはずが8分ほど遅延していた。なのでこの日の乗車時間は66分だ。
私は全線運転列車を選んで乗ったが区間運転列車もある。早稲田〜三ノ輪橋の間を1日中車両は行ったり来たりしながら、複線部分で車両を入れ替えたり、乗務員が交代するのだろう。三ノ輪橋駅も複線になっている。
駅の近くに小さな観光案内所「三ノ輪橋おもいで館」があり、5周年記念のイベントを行なっていた。この後の用事に向けて待ち合わせの時刻が迫っていたため、観光案内のパンフレットだけいただいて立ち去った。
時間があれば三ノ輪の商店街をぶらぶらしたかったのに〜〜。残念!
終わりに
今回は散歩より、乗車時間のほうが長かった。
また改めて庚申塚、飛鳥山、荒川遊園、三ノ輪あたりは訪れてみたい。
路面電車の歴史も調べてみるとおもしろく、最盛期には都内41系統も走っていたとか(1961年ころ)多くは都営バスとしてルートを引き継がれているようだ。
いつもは乗らない電車に乗り、ちょっと足を伸ばしただけでも楽しく、刺激を受けた。あれもこれも疑問に思うことが次々に出てきて、調べるのもおもしろい。十分に旅行気分を味わえる。
『散歩の達人』の特集号をKindleで集めて、行き先を探すのがクセになった。さて、次はどこに行こうかな?
【前回の散歩】