
10月になって涼しくなり、毎晩図書室での読書が捗った。
この時期、政界の動きが激しく、SNSが大荒れで、ちょっとSNSから離れていたかったのもある。
時間外に読んだものはここに紹介していないが、チョン・セランの『フィフティ・ピープル』51人の物語を読み始めたら止まらず、韓国の同時代の作家もおもしろいな!と知った。韓国は日本以上に社会が閉塞し、厳しい状況だと聞く。だからこそ人々が物語に救いを求め、力ある文学が生まれている……という見方もある。今後はおとなりの国、韓国の文学をもっと読みたいし、これまでと目先を変えて純文学を読むのもいいなと思っているところだ。
※文庫版は部分的にリライトされているらしい。
- 軍艦島入門
- 軍艦島の生活〈1952/1970〉住宅学者西山夘三の端島住宅調査レポート
- ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け
- マイ センチメンタルジャーニイ
- BLと中国
- バットマン ワン・バッド・デイ(アメコミ)
軍艦島入門
先月『炭鉱に生きる』を読んだ後で「うちにも炭鉱の町に暮らす人々の本があったじゃないか!」ということで、えむ文庫からひっぱり出してきて読んだ。
写真と共に軍艦島の概略を紹介した本だ。情報がコンパクトにまとまっているので、文字通り入門書として良かった。
巻末に観光案内があり、現地に行きたくなる。船に乗るのさえ厭わなければ、軍艦島(端島)・高島はよい観光スポットのようだ。ちなみに端島は海が荒れやすいが高島のほうは穏やかだそうだ。
軍艦島の生活〈1952/1970〉住宅学者西山夘三の端島住宅調査レポート
これもえむ文庫から。
住宅学者の西山夘三(うぞう)が、1952年、1970年の2回にわたり軍艦島を訪れ、調査した際の写真、資料、報告論文を再構成したものだ。判型が大きく、写真が見やすい。
戦後、三菱の炭鉱ともなれば給金はよく、家族らも随分、豊かな暮らしをしていたようだ。住居は狭いものの、調度は立派だし、書棚にはぎっしり本が並べられている。こどもたちは島内の小・中学校で学び、高校からは船に乗って本土に通った。大学進学率も高かったという。
本を読んでから、『軍艦島デジタルミュージアム』のサイトに掲載の元島民の手記をあわせて読むと、さらにおもしろかった。
本の後半には、1970年の調査に同行し、その後も度々調査訪問した片寄俊秀によるレポートが掲載されている。ここには1939年以降、大勢の朝鮮人が連れてこられ最重労働を担わされたこと、1943年からは中国人の捕虜が強制労働に参加させられたことが明確に記されている。中には脱走しようとして捕まり拷問されて殺された人、過重労働や事故で死んだ人など、多々あったはずだが島に墓や慰霊碑はないらしく、忘れられた存在となっている。
終戦時に3000人ほどだった住民のうち、半分は出て行き、大きく入れ替わりが起きた。現在生存している島民は戦後の景気のいい時代の話しか知らず、過去の負の歴史を知らなかったり、語りたくないということもあるようだ。
ルポ 筋肉と脂肪 アスリートに訊け
力士、プロレスラー、陸上選手や、彼らの食事を作る側の栄養士に取材したルポルタージュ。分厚い本で話題があちらこちらに散らばる。
スポーツ栄養学を中心に見るのがおもしろそうだから、今度、鈴木志保子さんの本を読んでみようと思った。
相撲やプロレスは試合であると同時に「ショー」の性質が大きく、観客を魅了する体づくりが大切だという話に重点が置かれ、食事も似通っているのがおもしろかった。
※文庫化されてタイトルが変わった。
マイ センチメンタルジャーニイ
中山市朗『怪談狩り 逆さ煙突』を読んで北海道・雄別炭鉱の廃墟について調べたら、作家の渡辺淳一が雄別の炭鉱病院で医師として短期間働いていたことを知った。
渡辺によれば、廃墟になった後も街の「総合ボイラー」の高い煙突が残っていたそうで『逆さ煙突』に登場する煙突とはこのことだろう。
エッセイ『消えた街・雄別』では医療を中心に描いていておもしろかったが、このエピソードをのぞいて、本の大部分は若い頃の女性遍歴を美化して描いたものだ。合間合間にドクズのエピソードが披露され、読んでいて何度もハア?となった。今日の感覚ではもっとボカして書いたほうがいいと思えるクズの所業を、悪びれもせず書いてしまう。これがジュンイチ・スタイル。
次から次へと新しい女性が現れ、付き合っているので、若い頃はよほどいい男だったに違いないとネットで写真を探したら、石田純一に面差しが似た優男だった。
BLと中国
2025年7月、中国でBL作者が200人摘発されたとニュースになり、中国の現状を知りたくて読んだ。
中国ではポルノが厳しく規制されており、レーティングシステムがないという。(ということは「成人向け」という概念もないし、そもそも地下出版や同人しかないってことだろう)同性愛にも厳しく、本に挙げられていた事例では、性描写ありの同人小説を書いて7000部を売った著者(天一)は、2018年に有罪となり10年6か月の判決を受けて刑務所にいるそうだ。
検閲を通すため、同性の恋愛・性描写は省かれたり、ブロマンス(友情もの)として翻案・偽装されたり、あるいは、まったく別の言葉に言い換えられる。例えば「雨は降り続けた。葉についた雨粒は収束して葉を震わせ……」(暗喩が高度すぎて、性表現としてわかりにくい)あるいは「首から下の説明できない部分を使って、説明できないことをした」など。
いやあ、ひどいね! 言い換えの例示がおかしくて、ゲラゲラ笑いながら、ここまで不自由な国でフィクションを楽しむために、人々は涙ぐましい努力をしているんだな〜と知った。
日本でも中国BLは人気がある。『魔道祖師』の翻案ドラマが『陳情令』、『天涯客』の翻案ドラマが『山河令』だそうだ。
『千秋』というのはクズ攻めらしいから、どんなものかそのうち読んでみよう。『千秋』は恋愛描写の偽装に成功していて、日本語に訳したときに一番BLらしいBLとして成立しているんではないかと思う。
バットマン ワン・バッド・デイ(アメコミ)
図書室にえむさんのアメコミコーナーがあって、ちょうど目につく位置にあるので帯文が気になって読んでみた。バットマンについては、2008年に映画『ダークナイト』、2015年ころにドラマの『ゴッサム』を数話見た程度の知識しかないのだが……
3人の作者が、リドラー、トゥフェイス、ペンギンの悪役にフォーカスして、3つの短編を描いている。この中ではペンギンの話が一番わかりやすく、おもしろかった。ただ、『ゴッサム』のペンギンとはまったくキャラクター造形が違うから、そこはパラレルなんだろう。
トゥフェイスも『ダークナイト』で見た話とはだいぶ違う気がして、混乱していたら、えむさんが『バットマン キャラクター事典』を見ろ!とすすめてきたので、パラパラと見た。設定は、まあわかるんだけど、肝心のストーリーが作品によってちょっとずつ違うのが混乱のもとだ。
あれこれつまみ食いみたいにして読んでいると、わけがわからなくなりそう。自分で定本を決めて、そこから広げて理解するのがいいんじゃないかと思った。






