
11月はKindle unlimitedに入り、竹書房の怪談本を読みあさった上に図書館で借りた本もバリバリ読んだ。
比較的暖かい日が多く、家の北側にある図書室で「ちょっと寒いな」と思いつつ、30分だけなのでなんとか工夫して読書を続けた。12月は冷え込むらしいので、いよいよエアコンを付けないとダメだろうな〜。
食欲の攻略書
はてなブロガー・みどりの小野さんがシェアしていて興味を持った。
科学的な解説に多くのページを割いている。分厚い本だ。
要点をまとめると、食事制限すればするほど代謝が落ちて、体重の「セットポイント」(=生存に必要と脳が定める脂肪の貯蔵量)が上がる。だから食事制限によって一時的に痩せたとしても、脳にとっては飢餓のアラートが出た状態であるから1〜2年するとまた元の体重に戻り、それどころか「前より増量」という結果になりやすい。
これって私の実感からしても納得できる話だ。
だから、食事制限なんかしないで、よく食べ、よく眠り、運動をして体に負荷をかけ、ストレスホルモンを下げ、インスリン感受性を改善するほうがいい。血糖コントロールも大事だ。(脂肪はとってもいいが、穀類の糖や砂糖はひかえたほうがいい)そうすることによって体重の「セットポイント」は下げられる。この体重の「セットポイント」という考え方が、私にとって新しかった。
無限の網 草間彌生自伝
吉田悠軌の『新宿怪談』を読んだら、土地の歴史のことがいろいろと書いてあって、おもしろかった。草間彌生の美術館があるのは知っていたが、草間が当地に住み、長らく精神疾患を持ちながら活動しているアーティストであることは知らなかった。それで興味を持って、自伝を読んだ。
1929年、草間彌生は長野県松本市の種苗問屋に生まれた。婿養子の父は女遊びが激しく、家庭は荒れており、母は末娘の草間につらくあたった。20歳そこそこで「早くお母さんから離れなさい」と精神科の医師にアドバイスされ、海外移住を決意したという。
ニューヨークに渡り、貧しい暮らしで苦労もしたが、比較的早いうちにアーティストとして名をあげた。初めの頃は自己の精神状態を反映した黒白の点描で無限の網目を表現した絵画で。次に、ヒッピーやゲイの人々を集め、裸にして草間がボディ・ペインティングし、演者が抱き合い、性行為のパフォーマンスをする「クサマ・ハプニング」のイベントで。
草間は幼少期に身内の性交を見てしまい、その暴力的なありさまに恐怖を感じた。(しかも、家庭内では、父がよそに作った女のことでしょっちゅう争いが起きていた)それでセックス嫌悪症になったらしい。恐怖と嫌悪の対象に執着し、徹底的に迫るのが草間のアートの手法だ。
本の後半に書かれたジョージア・オキーフとの友情、ジョゼフ・コーネルとのエピソードもおもしろかった。ここでジョゼフ・コーネルの名に出会うとは……。
2025年3月に惜しまれて閉館した「川村記念美術館」……ここで、20年前、コーネルの作品をまとめて見る機会があった。
草間が言うように、コーネルには人を寄せつけないさびしさがある。作品から感じた印象を裏付けるコーネルの人生のエピソードが紹介されていた。
コーネルは過干渉で気性の激しい母に支配され、「性は汚いもの、女に近づくな!」とする母からの押し付けに苦しんだ。そして、同じく母から抑圧を受けていた草間と共鳴し、彼女に愛を求めた。
2人の孤独なアーティストの邂逅。
まるで、小説みたいな話だ。
新版 吉兆味ばなし
最近、柳刃を買ったので、包丁のことを書いてある本を探して、たまたま手に取った本。
大阪に料亭吉兆を開いた湯木貞一(ゆき・ていいち)が料理の話をするのを聞き書きしている。『暮しの手帖』の名物連載だったようで、4巻まで出ているうちの1巻の新装版だ。
やわらかい大阪弁で、食べる人のことを考え、ひたすら料理の工夫について話している。高級料亭なので魚介類を中心に、一つ一つのボリュームが小さく(家庭ではそんなに何品も作って並べるわけにはいかない)本を読んだからといってすぐに「これを作ってみよう」とはならない。どじょうだとか鯉だとかはもだとか、スーパーでは入手困難な素材の話も多いし、すぐに役立つ知識が得られる本ではないが、料理の教養本として楽しく読んだ。
作ってみたいなと思ったのは、かしわと焼きねぎの茶碗むし、たまご豆腐。
そのうち、続きの巻も読みたい。
メトロポリタン美術館と警備員の私
えむさんが「メトロポリタン美術館なんて行かないでしょ」と言うから「行かないからこそ、読むんだよ」と言って読み始めたのに、読み終わる頃にはまんまと行きたくなった。
メトロポリタン美術館は、ルーヴル美術館、中国国家博物館に次いで、世界で3番目に来場者数が多い美術館だそうだ。
著者が11歳の頃、母に連れられて初めてメトロポリタン美術館を訪れた日のエピソード。家族の歴史と最愛の兄の死。そして、なぜ仕事を辞めて美術館で警備員として働くことにしたか。日々なにを思って働いていたか。警備員の仕事内容や人間関係について。話題は多岐にのぼり、興味が尽きなかった。
巻末には、作中で言及された作品のリストがあり、美術館のサイトで写真や詳細が見られるようになっている。
例えば本のはじめのほうに言及があった、ブリューゲルの『穀物の収穫』
Pieter Bruegel the Elder - The Harvesters - The Metropolitan Museum of Art
このサイトはすごい! 作品情報が充実しているし、検索しやすく、使いやすい。(東京都立のミュージアムにも似たようなサイトがあるが、データを列記しているばかりでキャプションがない)
メトロポリタンっておもしろいところだな。ドキュメンタリー映像があれば、見てみたい。
僕が死ぬだけの百物語(マンガ)全10巻
作者は初めての連載でいきなり百物語のマンガを描いて、100話10巻で完結させる偉業を成し遂げた。おめでとうございます!
このマンガ、単話の最初と最後に必ず、語り手の「ユウマくん」とその家族、同級生の「ヒナちゃん」の物語が挟み込まれる。最近のホラーマンガにはこの形式がすごく多いが、この狂言回しのパートが意味あるものとして機能している例は少ない。
めずらしく、この形式で成功しているのがすごいと思った。このマンガを100話続けられると見越して、応援し、掲載しつづけた編集部もえらい!
後半、ユウマくんとヒナちゃんの話のほうがおもしろくなっちゃって、本編に集中できなかった。
1話目から続く謎として、いつもユウマくんは自宅の学習机の同じ位置、同じアングルで語りかけている。一体なにに向かって語りかけているんだろう?(ビデオカメラでもあるのか……でも、カメラじゃなさそう)と思っていたのが、100話目にやっと明かされたとき、アッと驚いた。
第一夜 つれびと / 僕が死ぬだけの百物語 - 的野アンジ | サンデーうぇぶり
『サンデーうぇぶり』にて1〜3話まで公開されている。(2025年11月現在)
カウンセラーは何を見ているか
Twitterで流れてきて「おもしろそうだな」と思り、手に取った。
60代の熟練のカウンセラー(当時)が職業人生をふりかえっている。なんで表紙を若い女性の姿に描き変えて性的魅力をふりまく必要があったのか。(本文のイラストもずっとこの調子だ)医学書院ってセンスないな、気持ちわりーな!と思ったけど、これは編集側の意向であって、著者やイラストレーターに罪はない。
本の内容はおもしろかったし、「クライアントに共感しない」と言い切る信田先生の態度は立派だと思う。
後半、心疾患で入院したときのエピソードは「カウンセリングと関係ないんでは……」と思ったが、プライベートの時間だからこそ、同室の患者に影響を受けて具合が悪くなったりとか、病人の不安な心理を生々しく描いており、これはこれでおもしろかった。
若き日の信田先生が男性医師に連れられ、精神科病院の閉鎖病棟の「保護室」に入り、不意打ちで閉じ込められて、患者と2人きりにされたエピソードには怒りを感じた。一つ間違えば事故が起こりかねない状況だと思うし、いまでも、保護室内で医療従事者が患者と2人きりになるなんてこと、ありえるんだろうか?
随分昔の話ではあるが、男性医師から女性のコメディカルへの「見下し」「威圧」「嫌がらせ」「悪い風評を流す行為」に対して問題提起するわけでもなく、むしろ患者を「怖い」と感じてしまったことへの自責感情にフォーカスされていて、問題はそこじゃないと思った。患者を怖いと感じるのは当然のことで、訪問診療に訪れた医師・看護師が患者家族に殺される事件も現に起きているのだから、医療従事者が身を守ることをおざなりにしてほしくはない。





