仕事中にめずらしく弟から電話がかかってきた。
私「どうしたの!?」(緊迫)
K「おねえちゃん、部屋の冷蔵庫がないんだよ……」
ああ、またなんかやらかしたなと察した。
K「冷たい飲み物が飲めないから困ってる。暑い中、毎日、毎日、ワークセンターに通ってるのにさあ!」
わけもなく冷蔵庫がなくなるはずはない。なにか事情があって、本人にも説明済みのはずだが、記憶障害がひどいから忘れたのだろう。
K「お父さんとお母さんに電話しても出ないんだよ!」
めちゃめちゃ怒っている。
6月にスマホにウィルスが入って壊れたときも、父母が旅行中でつながらないもんだから、こっちに電話してきた。
2年前スマホを持つようになり、そこから電話のかけ方を覚え、FaceTimeも使えるようになった弟である。なにか気に入らないことがあったら電話して、解決するまで文句を言い続けるワザを覚えたらしい。
私「ふーん。あとでお父さんに聞いてみるよ。とりあえず、水道水を飲みなさいね。なんでもいいから水分を取らないと危ないよ」
K「お願いします(むっとしている)」
知らんがな〜と思いつつ、父母にメッセージで問い合わせをした。
すると……
母「グループホームの世話人から『冷蔵庫を撤去してほしい』と言われてしたことだから。世話人も、Kがこういう行動になることは想定済みで『対処する』と言っている。共用冷蔵庫の冷たい麦茶がもらえることになっていて、Kがあきらめるまでの辛抱だから。電話は無視してください」と言われた。
父母は何度も説明したのにKが理解せず、しつこいから無視しているようだ。
しかし、そう言われてもKには「聞いてみる」と言っちゃったしなあ。電話でごねられると鬱陶しいから、メッセージしてみるか。あいつ、メッセージは使えるのかなあ……(弟がスマホを入手してから、メッセージのやりとりはしたことがない)
私「世話人の人に麦茶をもらってください」
K「それじゃ困る」
私「(事情を忘れているのかと思って)世話人の人にきいてね。私は詳しく聞いてないから」
K「助けてください」
泣き落としである。ずるいテクニックばっかりおぼえて、私にそんなもんが通用すると思っているのが腹立たしい。
私「共有部分に麦茶があって、それをもらえるそうです。私は仕事でそっちに行ってあげられないから、自分でおだやかに話し合って解決してね。ケンカはしないでね」
K「わかってるけどストレス」
わかってたんかーい!
私「わかってるなら安心したわ。毎日暑くて大変だと思うけど、脱水するといけないから、麦茶をもらって水分補給してね。体に気をつけて、無理のないように。体調悪いときは無理しないでね」
K「しかし冷蔵庫壊れて俺の心は発狂です」
爆笑した。(笑いごとではない)
父母に報告した。
私「Kにメッセージ送ったら、読んで返事してきたよ。『わかってるけどストレス』だって。麦茶があることも一応わかってるみたい。いつの間にかスマホのメッセージが使いこなせるようになっていて、感心しました」
母「冷蔵庫はまったく使われていなかったけど、ゴムパッキンがカビて真っ黒になっているから『処分してください』と言われて、火曜日に見に行った。それでリサイクル業者に引き取らせたの。部屋のあちこちがカビていて、ベッドや布団を総取替え(これは少し前の話。省略)私は具合が悪いのにエアコンの掃除までして風邪が悪化したよ。そこから、文句の電話攻撃。私たちも何度も説明したけど、怒りが先に立って耳に入らない。久しぶりに何度も『死ね』と言われた。あなたの説明で納得してくれたならよかったわ。ありがとう」
お母さん、かわいそう……。
そして、ここまで一言も発しない父。ま〜た、透明人間になってる!?

話を聞く前は、なんで冷蔵庫がないのか理由を忘れて、それで怒ってるのかな〜と思ったんだけど、一応、本人もある程度事情は理解しつつ「これまであったものがなくなった」ことに不安を感じて執着しているみたいだ。
そもそも冷蔵庫の使い方として、ペットボトルのお茶を買ってきたり「自分で本数管理する」ということは一切できない人だから、コップにくんだ麦茶をキッチンから持ってきて、一時的に入れておく程度の使い方だったようだ。
そんなもん、個室から出たらすぐに共用のキッチンがあって、ほんの3m歩けば冷たいお茶が持ってこられるわけだし、それすらめんどくさいならサーモスの保温マグでも使っておけという話だ。アホらしい!
本当に、しょーもないことで、家族を振り回してくれる。
しかし「俺の心は発狂です」のセリフは良かったな〜。
パワハラ代議士として録音が出回り、有名になった豊田真由子の「おまえはどれだけあたしの心を叩いている!」(2017年)に通じるものがある。被害者ぶって他人を脅すやり方はモラハラの手口だよ。
自分が「発狂」(=この場合、「怒り狂う」の意味)している自覚があるところも、おもしれえなと、ねえちゃん思ったわ。
メッセージを送ったら、次の日は電話が止んだそうだが、その次の日また電話してきたと聞いて、私もメッセージを送りKと会話した。
彼が冷蔵庫のない生活に慣れて不安を感じなくなるまで、世話人とKと家族の根比べになりそうだ。